違法民泊の罰則罰金

2017年3月7日に旅館業法の一部を改正する法律案が閣議決定されました。

今回の改正案で一番大きなポイントは罰則の強化があげられます。

今まではどのような罰則があって、その罰則がどのように強化されたのかを判りやすくご説明したいと思います。

旅館業違反の罰則とは

旅館業法の罰則

旅館・ホテル以外にも民泊のように「宿泊料を受けて、人を宿泊させる営業」をする場合は旅館業法という法律に基づいて、旅館業の営業許可を取得しなければいけません。

(旅館業法に関しましては『旅館業法とは』をご参照下さい)

旅館業の許可をとらずに「宿泊料を受けて、人を宿泊させる営業」をした場合、旅館業法違反で罰金などの罰則の対象となります。

昭和23年に旅館業法が出来て以来、今回の改正案が出るまでの旅館業法違反の罰則の上限は罰金3万円でした。

旅館業法の罰則

今回の違法民泊などの旅館業法違反者に対しての罰則強化は「罰金の引き上げ」と「調査権限の付与」の2点があります。

それでは、どのような違反行為にたいして、どのように罰則が強化されたのかを、それぞれ詳しくみていきましょう。

旅館業法違反の罰金

今回の改正での罰金の引き上げとなる旅館業法の違反行為には2種類の違反行為があります。

一つは、旅館業の営業許可を受けずに無許可で営業をおこなう違反行為です。

もう一つは、旅館業の営業許可は受けていて、旅館業の運営上で旅館業法の規定を違反する行為です。

無許可での営業

改正前の旅館業法の罰則は以下のようになっていました。

旅館業法 第十条
左の各号の一に該当する者は、これを六月以下の懲役又は三万円以下の罰金に処する。
一  第三条第一項の規定に違反して同条同項の規定による許可を受けないで旅館業を経営した者
二  第八条の規定による命令に違反した者

「第三条第一項の規定に違反して同条同項の規定による許可を受けないで旅館業を経営」というのは、旅館業の営業許可を受けずに無許可で営業するような場合です。

「第八条の規定による命令に違反」というのは、旅館業法を違反して免許の取り消しや営業停止を命じられたにも関わらず、それに従わずに営業を続けるような場合です。

こういった違反行為をおこなった場合、今までは罰金の上限が3万円でしたが、改正後は上限が100万円と大幅に引き上げられました

罰金と懲役の両方もありえる

今回の改正の変更点を見てみると上記の第十条一項は以下のように書かれています。

旅館業法改正 第十条

次の各号のいずれかに該当する者は、これを六月以下の懲役若しくは百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。

旅館業法の一部を改正する法律案新旧対照条文(平成29年3月7日提出)

今までは六ヶ月以下の懲役か3万円以下の罰金でしたが、今後は懲役と罰金の両方を科せられる可能性もあるということです。

細かい点ですが、罰則を強化しているという点がここからも判ります。

以下でご紹介します第十一条も同様の改正がされています。

運営上の違反行為

旅館業の営業許可は受けていて、旅館業を運営する上で決められた規則を守らない者に対しての罰則も強化されました。

まずは改正前の旅館業法を見てみましょう。

旅館業法 第十一条
左の各号の一に該当する者は、これを五千円以下の罰金に処する。
一  第五条又は第六条第一項の規定に違反した者
二  第七条第一項の規定による報告をせず、若しくは虚偽の報告をし、又は当該職員の検査を拒み、妨げ、若しくは忌避した者

詳しくはこの後ご説明しますが、旅館業法の第五条、第六条第一項、第七条第一項の規定に違反した者に対する罰金の上限が5,000円から50万円に大きく引き上げられました

宿泊を拒んだ場合

旅館業法では以下のように、ある特定の事情がある場合を除いては宿泊を拒んではいけないという規則になっています。

旅館業法 第五条
営業者は、左の各号の一に該当する場合を除いては、宿泊を拒んではならない。
一  宿泊しようとする者が伝染性の疾病にかかつていると明らかに認められるとき。
二  宿泊しようとする者がとばく、その他の違法行為又は風紀を乱す行為をする虞があると認められるとき。
三  宿泊施設に余裕がないときその他都道府県が条例で定める事由があるとき。

第五条の規定に違反した者とは、認められた理由がなく宿泊を拒んだ者ということになります。

感染症防止とカスタマーハラスメント対策の実現

1948年に制定された旅館業法は、戦後の混乱期に宿泊拒否による行き倒れを防ぐ目的があり、宿泊拒否が原則禁止でした。

しかしアフターコロナにおいては、旅館業者施設による感染症対策は必須であり、感染症対策をお願いしても受け入れて頂けない宿泊予定者に対しても「宿泊拒否の原則禁止」の旅館業法は時代にそぐわないと問題になっていました。また近年では、宿泊者から旅館業者施設に過度な要求をする「カスタマーハラスメント」に対応に旅館業者施設が困っている現状がありました。

上記の問題に対応すべく「宿泊が拒否できる」ように旅館業法の改正が検討され、2023年6月14日に公布されました。

旅館業者施設による「宿泊拒否」を適切に判断されるのかどうか、障害などを理由とした宿泊拒否につながらないように運用される事が望まれます。

以下「旅館業の施設において特定感染症の感染防止に必要な協力の求めを行う場合の1 留意事項並びに宿泊拒否制限及び差別防止に関する指針(案) たたき台」の抜粋を参照下さい。

はじめに

○ 旅館業法(昭和23年法律第138号。以下「法」という。)は、その第1条に規定しているとおり、旅館業(旅館・ホテル営業、簡易宿所営業及び下宿営業をいう。以下同じ。)の業務の適正な運営を確保すること等により、旅館業の健全な発達を図るとともに、旅館業の分野における利用者の需要の高度化及び多様化に対応したサービスの提供を促進し、もって公衆衛生及び国民生活の向上に寄与することを目的としている。

○ 旅館業の営業者と宿泊者は、民対民の関係であり、本来、営業の自由があり、契約自由の原則が適用されるが、法においては、公衆衛生と、旅行者等の利便性といった国民生活の向上等の観点から、一定の規制を設けている。これを踏まえ、法第5条では、旅館業の営業者は、伝染性の疾病にかかっていると明らかに認められるとき等の宿泊拒否事由に該当する場合を除き、宿泊しようとする者の宿泊を拒んではならないとしてきた。

○ こうした中、新型コロナウイルス感染症(病原体がベータコロナウイルス属のコロナウイルス(令和2年1月に、中華人民共和国から世界保健機関に対して、人に伝染する能力を有することが新たに報告されたものに限る。以下同じ。)の流行期に、宿泊者に対して感染防止対策への実効的な協力の求めを行うことができず、旅館業の施設の適切な運営に支障が生じることがあったほか、いわゆる迷惑客について、旅館業の営業者が無制限に対応を強いられた場合には、感染防止対策をはじめ、旅館業の施設(旅館・ホテル、簡易宿所及び下宿。以下同じ。)において本来提供すべきサービスが提供できず、法上求められる業務の遂行に支障を来すおそれがあった等の意見が寄せられた。 ※ 全国旅館ホテル生活衛生同業組合連合会が令和4年8月に調査した結果によれば、

・ 宿泊者が感染拡大防止の協力の求めに応じずに対応に苦慮した事例や改正前の法26 の下で感染症に関連して宿泊を拒否するか対応に苦慮した事例があったと回答した27 施設が23.4%であった。

・ いわゆる迷惑客等、過重な負担であって対応困難なものを繰り返し求められて対応に苦慮した事例があったと回答した施設が46.4%であった。

このように、旅館業の施設における感染防止対策に係る課題が顕在化し、また、旅館業等の事業環境は厳しさを増した。こうした情勢の変化に対応して、旅館業等の事業活動の継続に資する環境の整備を図ることが必要とされた。

このため、旅館業の施設において適時に有効な感染防止対策等を講ずることができるようにするとともに、旅館業等の営業者が必要に応じ円滑かつ簡便に事業譲渡を行えるようにすることを目的として、「生活衛生関係営業等の事業活動の継続に資する環境の整備を図るための旅館業法等の一部を改正する法律」(令和5年法律第52号。以下「改正法」という。)が、政府案を一部修正の上、令和5年6月7日に成立し、同月14日に公布されたところである。

旅館業の施設において特定感染症の感染防止に必要な協力の求めを行う場合の1 留意事項並びに宿泊拒否制限及び差別防止に関する指針(案) たたき台

宿泊者名簿の記載と提出義務を果たさない場合

旅館業法では、宿泊者名簿の作成と職員から要求があった場合の提出義務を定めています。

旅館業法 第六条
営業者は、宿泊者名簿を備え、これに宿泊者の氏名、住所、職業その他の事項を記載し、当該職員の要求があつたときは、これを提出しなければならない。
2  宿泊者は、営業者から請求があつたときは、前項に規定する事項を告げなければならない。

第六条第一項の規定に違反とは、宿泊者名簿を作成していない、又は、宿泊者名簿に不備があるような場合です。

こういった違反行為は50万円以下の罰金の対象となる可能性があります。

報告・立入検査などを許否した場合

旅館業法では、必要がある場合には営業者からの報告や立入検査などが出来ると規定しています。

旅館業法 第七条
都道府県知事は、必要があると認めるときは、営業者その他の関係者から必要な報告を求め、又は当該職員に、営業の施設に立ち入り、その構造設備若しくはこれに関する書類を検査させることができる。

虚偽の報告をしたり、立入検査を拒否したり、検査を妨げたりした場合には50万円以下の罰金の対象となる可能性があります。

無許可営業者への立入調査

先程見ました「旅館業法第七条」の立入調査は、旅館業の営業許可を受けている業者に対しての規定です。

無許可で営業している者に対しては立入調査の権限がないのです。

許可を受けている人には立入検査ができて、無許可の人には立入検査ができないのは不思議に思われるかもしれません。

今まで無許可の違法民泊の実態を把握することが難しかった理由の一つに、拒否された場合に無許可営業の施設への立入検査が出来なかったことがあります。

今回の改正で、無許可で営業をしている業者に対しても立入調査が出来るように権限が拡大されました。

無許可で営業をしている業者も営業許可を受けている業者と同様に、虚偽の報告をしたり、立入検査を拒否したり、検査を妨げたりした場合には50万円以下の罰金の対象となる可能性があります。

違法民泊の通報窓口

民泊に関する問い合わせは通常は管轄する保健所の一般窓口に連絡しますが、違法民泊に対しては専用の通報窓口を設置している自治体もあります。

大阪市の民泊通報窓口

大阪市の違法民泊に関する相談

電話による受付

大阪市保健所環境衛生監視課(旅館業指導グループ)

電話番号:06-6647-0835

平日9時から17時30分(12月29日から1月3日までを除く)

ファックスによる受付

ファックス番号:06-6647-0733

24時間受け付けています。

メールによる受付

メールアドレス:ryokan2016@city.osaka.lg.jp

24時間受け付けています。

京都市の民泊通報窓口

京都市の違法民泊に関する相談

京都市違法民泊通報用チラシ

電話による受付

電話番号:075-223-0700

時間 午前10時~午後5時(平日のみ)

ファックスによる受付

FAX番号:075-223-0701

24時間受け付けています。

電子メールによる受付

メールアドレス minpakusoudan@city.kyoto.lg.jp

暗号化フォーム

非暗号化フォーム

24時間受け付けています。

国のコールセンター

• 平成30年6月15日以降、民泊に対する通報について、民泊制度コールセンター(0570-041-389)で受付を行っています。
• コールセンターは、平日9時から18時まで対応しています。
• コールセンターに寄せられた苦情は、住宅宿泊事業法に基づき届出がされた施設であれば、コールセンターから住宅宿泊事業者又は住宅宿泊管理業者に連絡(対応依頼)があり、事業者が不明な場合等は、大阪市へと引き継がれます。大阪市へ引き継がれた苦情は、大阪市の開庁時間に現場調査等により対応を行います。

まとめ

まとめ

いかがでしたでしょうか。

旅館業法は約70年前に作られた法律で、無許可営業に対する罰金額の上限も当初の3万円のままでした。

今回の罰金の上限の引き上げや無許可営業者への立入権限の付与などの改正をおこなうことで、違法民泊に対する取締りも一層強化されることと思います。

とくに無許可民泊に対しては、上限が100万円という罰金になりますので、今後の違法民泊に対する大きな抑止力となるのではないかと思います。

また、2023年にも旅館業法の一部改正がありました。宿泊事業者とその従業員を守る改正がポイントになっていますが、「宿泊拒否」の適切な運用が期待されています。

お問い合わせ

    お名前 (必須)

    メールアドレス (必須)

    物件所在地(必須)

    お問い合わせ内容(必須)

    上記の内容にお間違いがなければ、チェックを入れ送信してください。