民泊用物件の選び方

新しく物件を購入して民泊ビジネスを始めようとしている方は、今後の旅館業法の規制緩和や民泊条例の要件緩和などの可能性も考慮して、慎重にすすめる必要があります。

せっかく購入した物件が将来違法とならないようにするには、出来るだけ慎重に要件を確認することが重要です。

今回は民泊物件を購入する場合に注意しなければいけない点を判りやすくご説明したいと思います。

中古物件を購入して民泊を始めようとご検討されている方は『中古物件を購入して民泊を始める時の注意点』もご参照下さい。

物件の場所をチェックする

物件の場所をチェックする

宿泊客に需要がある立地で物件を探すのは当然ですが、その前に民泊として使用するのに、法令に違反しない場所であるかを確認することが重要です。

地域によって旅館業法の適用が有る地域と無い地域がありますので、どこで民泊を始めたいかで、民泊に使用出来る物件の条件が異なります。

民泊条例適用地域(国家戦略特区)

いわゆる「民泊特区」と呼ばれる地域で、2016年2月24日時点では東京都大田区で民泊条例が施行されており、2月12日に民泊認定の第一号の業者が出ました。

2023年8月31日時点では東京都大田区で109の認定事業者がいます。

また、大阪府と大阪市で条例が制定され、大阪府、大阪市、八尾市、寝屋川市に合計で2113の事業者がいます。その他には、千葉市、新潟市、北九州市に民泊特区があります。

(『行政の動き』に行政の民泊に関する記事の一覧を掲載していますのでご参照下さい。)

また、国家戦略特区に指定されている地域全てで民泊条例が制定できるわけではありませんので、その点はご注意ください。

国家戦略特区のどの地域で民泊条例の制定が認められているか等は『国家戦略特区とは』で詳しくご説明していますので、ご参照下さい。

民泊条例の注意点

大阪府民泊実施地域

条例は各自治体がその地域にあわせて制定したものですので、当然内容も異なります。

以下に書きます都市計画法の用途地域に関しても、大田区はいわゆる「家主不在型」の場合は、旅館・ホテルの営業が出来る地域でのみ民泊を認めていますが、大阪府では「市街化区域の中で工業専用地域を除く全地域」で民泊を営業することも許可しています。

但し、大阪府の民泊条例に参加するかは各市町村の判断になります。

また、参加した場合でも民泊営業を認める用途地域は制限するという部分的な参加というかたちをとる市町村もあります。

詳しくは『大阪府の民泊条例に対する市町村の対応』で詳しくご説明していますのでご参照下さい。

旅館業法が適用されないといっても、消防設備などに関しては旅館業法で定められているものと同様の設備の設置が必要になる場合も多いので注意が必要です。

民泊条例に関しては『民泊条例とは』で詳しくご説明していますので、ご参照下さい。

旅館業法適用地域

旅館業法の旅館

宿泊施設を、不特定多数の人に対して繰り返し宿泊料を受けて宿泊させる場合、旅館業登録が必要になります。

旅館業法では旅館業を始めるにあったって、細かく要件を定めています。

ところが、現在外国人観光客の急増により、宿泊施設の不足という問題が続いており、さらに増える観光客の宿泊先を確保することも重要な課題になってきています。

このため、現行の旅館業法を緩和する動きになっています。(2016年4月1日の「旅館業法改正」の動き

2018年、客室の延床面積は、定員が10人名未満の簡易宿所の場合には3.3㎡メートルに収容定員の数を乗じて得た面積以上であればいいと改正されました。

用途地域の確認

旅館業法適用地域はもちろん、民泊条例の適用地域であっても、物件のある場所の用途地域は確認しておく必要があります。

用途地域によっては民泊ビジネスがそもそも出来ないという場合もありますので、用途地域の確認は非常に重要です。

用途地域の確認に関しては『用途地域の確認』をご参照下さい。

条例の確認

台東区の民泊条例改定

地域によっては、民泊許可の条件を、旅館業法よりも厳しい条件を設定しているケースもあります。

例えば、4月1日の旅館業法施行令の改正に伴った通知で、一定条件下では簡易宿所のフロント設置義務は不要とされました。

しかし、各自治体では条例でフロントの設置を義務付けているところもあります。(東京都台東区で民泊に関する条例改正案を可決

また、リゾート地として有名な軽井沢町のように、町の方針として民泊設置を認めないとしているところもあります。(軽井沢町の町内全域「民泊禁止」方針発表

このような地域ごとの条例や方針を確認して物件を購入しなければ、購入後に民泊営業が出来ないということになる可能性もありますので、十分ご注意下さい。

「マンション」か「一戸建て」を決める

民泊を始める場合、貸し出す施設を一戸建てにするか、マンションの一部屋にするかで大きな違いがあります。

一戸建ての場合は既存不適合になっていないかを確認することが重要になります。(既存不適合に関しては後述します。)

マンションの一室を購入して民泊に利用しようと考えている場合は「マンション管理規約」の内容に注意が必要です。

マンション管理規約の内容を確認する

「マンション管理規約」とは、マンションの住民みんなが快適に暮らせるような禁止事項など、マンションの住人が守らなければいけない絶対的なルールです。

(マンション管理規約に関しては『えっ!民泊が禁止!?マンションの「管理規約」って何?』で詳しくご説明していますので、ご参照下さい。)

マンション管理規約

マンションの管理規約は、一般的には「専有部分をもっぱら住宅として使い、他の用途に供してはならない」とされています。

つまり住宅以外の民泊のようなビジネスとしての使用は禁止されているのです。

2015年12月に、住友不動産が販売時から民泊禁止(管理規約での禁止)の新築マンションを計画中というニュースがあったように、自分の住むマンションが民泊に使用されたくないという需要はかなり増えてくると思います。

通常の規約に加えて、「不特定多数に宿泊・滞在目的で使わせてはならない」「部屋を宿泊施設として使ってはいけない」といった、明確に民泊を禁止する文言を入れるマンションも増えると予想されます。

こういった規約がある場合は、当然民泊としては使用出来ませんので、物件購入の際には必ずマンション規約の確認と管理組合に民泊利用の可否の確認をする必要があります。

マンション管理規約に民泊を禁止した例としてはブリリアマーレ有明が有名です。

建築物の適法性をチェックする(既存不適格建築物)

建築関係の法令は防災や環境整備の面でたびたび法令が改正されます。

そのため、昔の建物の場合、既存不適格建造物となってしまう場合があります。

既存不適格建築物とは

既存不適格建造物とは

既存不適格建築物とは、建築基準法などの法令が改正された場合、既に建っている建物で、改正された後の法令の規定に適合しない建物のことを言います。

つまり、建物を建てた時点では法令の規定を満たしているのですが、法令が改正されて違法状態になってしまった建物です。

これを「既存不適格建築物」と呼びます。

既存不適格建造物と違法建築物の違い

違法建築物とは

違法建築物とは、建てた当初から違法状態の建物を指します。

また、増改築工事などを行うことによって、以下で見ていきます建ぺい率や容積率、接道条件、建物の構造などの基準を違反したり、建築確認申請をしなかった建物なども違法建築物となります。

既存不適格建造物は建築、増築、用途変更した時点で「合法」、違法建築は建築、増築、用途変更した時点で「違法」という点で全く異なります。

物件を購入する際には、既存不適格建造物ではないという事を調べるのと同時に、違法建築物では無いという点は必ずチェックする必要があります。

検査済証の有無

民泊用に購入した物件を増改築したり、一般住宅から簡易宿所へ用途変更をする場合に、違法建築物でないか(建築当時の関係法規に適合していたか)を確認するために検査済証が必要になります。

古い物件になると、検査済証がなかったり、建築確認申請書はあっても、申請内容と異なる建物を作ったため確認済証をとらなかったなど、いろんなケースがあります。

用途変更が出来ないと民泊としての貸し出しが出来ないという場合もありますので、検査済証の有無は必ず確認しましょう。

建ぺい率と容積率

建ぺい率とは「建築面積の敷地面積に対する割合」、容積率とは「建築物の延べ面積の敷地面積に対する割合」のことです。

例えば100㎡で建ぺい率50%、容積率100%の土地があったとします。

この場合の建ぺい率の規制では、建物の投影面積(おおむね建物の1階部分の面積)が50㎡以内(土地の広さに対して50%)の範囲で建物を建てなければいけません。

容積率の規制では、2階建の建物を建てた場合、1階と2階部分の床面積が100㎡(土地の広さに対して100%)以内で建てなければいけません。

この建ぺい率と容積率は建築基準法で定められていて、率に関しては用途地域によって異なります。

物件を購入する場合、建築当初は建ぺい率や容積率の違反をしていないかったけれども、現在の建築基準法で違反している場合、改築をする際にはそれまでの建物よりも小さな建物しか建てられないというケースもありますのでご注意が必要です。

接道条件

現在の建築基準法では、幅4m以上の道路に2m以上接していなければいけないとされています。

昔に建てられた建物は、建築当時はそういった法令がありませんでしたので、接している道路の幅が4m未満というものもたくさんあります。

そういった建物は、改築する時に道路から少し下がったところからしか建築出来ない場合があります。これをセットバックと言います。

(詳しくは『2項道路とセットバック』のページでご説明しています。)

2項道路

建築基準法以外でも、特定行政庁が建築審査会の同意を得て許可した場合や、各自治体が条例で別途条件を定めている場合がありますので、行政窓口か不動産会社に確認することをおすすめします。

共同住宅の窓先空地

窓先空地(まどさきくうち)とは、共同住宅(マンション)で火災がおこった場合の避難を容易にするために、1階の住戸の窓に直面するマンションの敷地部分に、条例で定められた幅員以上の空地を設けて、その空地を避難経路として利用できるよう定めたものです。

この窓先空地の制度は、東京都や横浜市など一部の自治体が条例で定めて実施している制度です。

ですから、窓先空地は全国の全てのマンションで必要というものではありませんが、窓先空地のように各自治体の条例でさまざまな規制が設定されています。

今後の法令で、既存不適格の物件は民泊として使用出来ないという規制が出来る可能性もありますので、「物件が現在の法令に対しても違法の状態ではないか」など建築基準法のような法律だけではなく、自治体の条例なども必ず確認しておく必要があります。

部屋の広さをチェックする

ワンルーム

2016年3月30日施行の旅館業法施行令の改正で、現行の簡易宿所の構造設備基準の「33㎡以上を求める」という点が民泊を行う上でクリアすることが難しいため、「33(収容定員が10人未満の場合は、3.3×収容定員)㎡以上であることを求める」という規定への改正されました。

2016年3月30日の改正内容に関しましては『ワンルームマンションでの民泊開業が難しい3つの理由』で詳しくご説明しております。

まとめ

まとめ

いかがでしたでしょうか。

今後の旅館業法や民泊条例の条件緩和の流れの中で、すぐに物件を探すと言うより、様子をみながらという方が多いのではないかと思います。

しかし、用途地域や違法建築又は既存不適格建造物かどうか、検査済証、建ぺい率と容積率などは、規制の緩和とは関係なく必ずチェックしておくべき事項ですので、是非覚えておいて下さい。

本文でも書きました通り、各自治体が制定する「条例」を調べておくことは非常に重要です。

行政窓口、不動産会社、その他行政書士などのプロから情報を集めながら慎重に物件選びをされることをお勧めします。

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