中古物件を購入して民泊を始める時の注意点

[記事公開日]2016/08/22
[最終更新日]2016/09/01
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中古物件で民泊を始める注意点

私の事務所には「これから中古物件を購入して民泊を始めたいので、どうしたらいいですか」というご相談をたくさん頂きます。

民泊営業を目的で中古物件をご購入される場合、万が一民泊が出来ない場合は大変なことになってしまいます。

特に、旅館業(簡易宿所)営業許可を取得して民泊を始める場合は注意が必要です。

それでは、中古物件を購入してから民泊を始める場合、どういった流れで営業許可を申請して、どのような点に注意するべきなのかを判りやすくご説明したいと思います。

 

事前に確認すべき事項

民泊を始める前に、いくつか確認しておかなければいけない事があります。

この作業を怠ってしまうと、最悪の場合、物件を購入したのに民泊が始められないという事態になりかねません。

ここでは、最低限確認しておくべきことをご紹介します。

 

どのタイプの民泊を始めるか

民泊の種類2016年8月21日現在では、国家戦略特区以外で合法的に民泊を営業するには「旅館業(簡易宿所)の営業許可」が必要になります。

ですから、すぐにでも民泊を始めたいという方は旅館業の営業許可申請をすることになります。

国家戦略特区では、各地方自治体が条例で定めた要件を満たして認定を受ければ「特区民泊」を営業することが出来ます。

この特区民泊は2016年8月21日現在では「6泊7日以上」という宿泊日数の最低日数が定められているため、認定を受けて営業している民泊はあまり多くありません。

しかし、この「6泊7日以上」が「2泊3日以上」に短縮されるのではないかという報道も一部されています。(2016年8月5日 日経新聞

行政に確認しましたところ、今のところ2泊3日になるというようなことは確定していないとの回答でした。

しかし、将来は短縮される可能性は十分あると思います。

特区民泊は旅館業よりも認定も運営も規制がゆるい面もありますので、2泊3日であれば旅館業ではなく特区民泊を選択して営業される方も多いのではないかと思います。

また、現在法整備を進めている「民泊新法」で規定される「新法民泊」は許可ではなく、登録するだけですので、旅館業や特区民泊と比べて非常に簡単に営業を始めることができます。

しかし、新法民泊は年間の営業日数が制限されますので、通年で営業をしたい場合は向いていません。

このように、どのタイプの民泊を始めるかを最初に決めておく必要があります。

「旅館業」「特区民泊」「新法民泊」の違いに関しましては『一目瞭然!「旅館業法」「民泊条例」「民泊新法」の比較一覧』をご参照下さい。

 

どこで民泊を始めるか

好条件の物件を見つけると「まず購入してから、リフォームをして旅館業の許可を取ろう!」と思われることもあるかもしれませんが、それは非常に危険です。

どんな点に注意しなければいけないのかを見てみましょう。

旅館業法施行条例を確認する

旅館業(簡易宿所)の許可条件は各地方自治体の条例で規定されています。(詳しくは『旅館業法とは』をご参照下さい。)

自治体によって、フロント設置義務の有無やフロントの大きさ、トイレの数、洗面所の給水栓の数など細かい条件が異なります。

必ず所轄の自治体の旅館業法施行条例を確認しておきましょう。

旅館業法施行条例以外の条例も確認する

ラブホテル条例「トイレの数とか洗面の給水栓とかは要件通りリフォームしますから、大丈夫ですよ」と言われるご依頼者様もいらっしゃいます。

しかし、自治体によっては、条例で「ロビーや応接室、集会所などをそれぞれ30㎡以上で設置すること」としている自治体もあります。

そうなると100㎡近いスペースを確保しなければいけないことになります。

この条件であれば100㎡以下の物件は民泊営業は不可能です。

仮に200㎡の一軒家でも半分が客室以外のスペースで、しかも階段や浴室などのスペースを考えると、十分な客室の広さを確保できなくなるかもしれません。

そう考えると、この条例のある市町村で物件を購入しても、民泊営業の許可が取れない可能性が非常に高いと言えます。(実際、この条例のある自治体では、現時点で民泊としての簡易宿所営業件数はゼロと聞いています)

これは「ラブホテル規制」を目的に作られた条例で、各自治体でいろいろな内容で規制しています。

もちろん民泊はラブホテルではないのですが、簡易宿所営業許可を取る場合、このラブホテル規制条例も考慮して建設しなければいけない場合もあります。

このように旅館業法施行条例以外にも自治体によっては非常に厳しい条件を設定しているところがありますので、物件購入前に必ず確認するようにして下さい。

用途地域を確認する

都市計画法で定められている用途地域によっては、旅館業の営業許可が取れない地域があります。

用途地域を調べずに物件を購入してしまった後に、民泊営業が出来ない地域と判っても、売買時に何か特別な取り決めをされてい無い限り、通常は物件の売買取引を取り消す事は出来ません。

民泊用に物件を買ったのに、民泊が出来ないというようなことにならないように注意が必要です。

文教地区を確認する

文教地区都道府県や市町村の条例により、「文教地区」の指定を受けた地域は注意が必要です。

文教地区とは、学校、図書館、美術館、博物館等の文化施設がある程度まとまった地区で、都市計画法で「文教地区」の指定をされた地域です。

教育や文化活動をおこなう地域として、環境の悪化をもたらすような施設の建設を制限している場合があります。

旅館やホテルの営業を禁止している文教地区もありますので、用途地域以外にも文教地区に関しても調べておきましょう。

 

旅館業の営業許可申請の流れと注意点

それでは、中古物件を購入して旅館業(簡易宿所営業)で民泊を始める場合の申請の流れと注意点をご説明していきたいと思います。

自治体によって細かい部分の流れや注意点は異なりますので、あくまで一例としてご参照下さい。

 

建築(リフォーム)計画立案

建築計画中古物件を購入して、そのままの構造で旅館として使用出来るケースはほとんどありません。

ほとんどの場合、許可をとる為には、火災報知機などの消防設備やトイレ、洗面所、部屋の構造などのリフォームが必要になります。

旅館業の営業許可申請は、事前に許可の要件を満たすための建築計画を作成して、それが承認されてから申請をすることになります。

私が不動産会社を介してお客様に物件を紹介させて頂く場合、買主様へ旅館業の許可を受けるまでの流れをご説明するようにしています。

また、旅館業の営業許可に必要なリフォームをすると、どれくらいの費用になるかといった内容までを打合せするようにしています。

後述しますように建設計画届を提出して審査が終わって初めて旅館業の許可がとれるかが判明します。

物件の売主様にはその事情を説明して、審査が終わった時点で物件を購入するかを決めるということをご了解頂けるかを確認しています。

もちろんご了解頂けない場合もありますので、その場合は買主様に先に物件が売れてしまった場合のリスクも説明します。

中古物件を購入される場合、物件を購入する不動産会社さんにこういった旅館業許可取得の事情をご相談されるのがよいかと思います。

この建築計画を基に保健所、都市計画局、消防局などと打合せをします。

打合せの結果、計画の修正が必要な場合は修正をします。

 

建築計画届提出

建築計画届保健所、都市計画局、消防局などと打合せをした建築計画を基に建築計画届を保健所に提出します。

立案の時点では、間取りなどの簡単なプランでも大丈夫なのですが、建設計画届では以下のような資料を提出しなければいけません。

  • 構造設備の概要(様式3)
  • 構造設備確認票(様式3-2)
  • 周囲300メートル以内の見取図
  • 配置図
  • 立面図(外観の形状及びマンセル表色系で色彩を明示したもの)
  • 各階の平面図
  • 広告塔、広告板、その他の屋外広告物及び屋外照明設備等の図面
  • フロント展開図又は投影図
  • 給水・給湯・排水系統図
  • 新・旧の比較図面等(増改築の場合)

建築計画届の審査には約3~4週間ほどかかります。

物件の近くに学校や公園、公民館、博物館などがある場合は、教育委員会、こども青少年局、建設局、府知事等に意見照会をするため、更に数週間審査がかかる場合もあります。

 

審査の可否の通知書を受領

建築計画審査建築計画届の審査がOKになった場合、その計画通り建築をして建築確認を申請します。

つまり、この時点で旅館業許可がとれるかほぼ判明します。

ですから、建築計画届の審査前に中古物件を購入してしまうと、「購入したけれども旅館業の許可が取れなかった」となる可能性もありますので、十分お気を付け下さい。

(保健所の検査で図面に無い不備が指摘される場合もありますので、建築計画届の審査で建築可能となっても、100%必ず許可が出るとは限りません。)

 

建築確認申請

建築確認届けの内容に従って、建築確認申請をして建設に着工します。

建築の内容に変更がある場合は、「計画変更届」を保健所に提出します。

計画変更届が出された場合、中間検査もおこなわれます。

 

工事の完了

保健所や消防署からの検査は建物の工事が完成した後におこなわれますが、消防法令適合通知書交付申請や旅館業営業許可申請は工事完成前に提出することも可能です。

その場合、工事完成の目処がたって、工事完成予定日以降に検査の日程を調整します。

 

消防法令適合通知書交付申請

民泊に必要な消防設備所轄の消防署に「消防法令適合通知書交付申請」を提出します。

消防署は、建物のリフォームが完成した後に、消防法令適合通知書を交付する為の消防法令検査をおこないます。

消防署の検査の後、特に問題が無い場合は約1~2週間程度で消防法令適合通知書が発行されます。

この消防法令適合通知書を、旅館業営業許可申請と一緒に保健所に提出します。

 

旅館業営業許可申請

次に旅館業の営業許可申請をおこないます。

(旅館業の営業許可申請方法に関しては『民泊の許可申請方法を全解説します!』をご参照下さい。)

 

検査済証が無い場合

検査済証が無い場合旅館業営業の許可申請には建物の「検査済証」というものを一緒に提出しなければいけません。

工事完了届の提出に基いて、提出された確認申請通りに建築されて違法な点はないかなどの検査を建築主事などが行います。

この検査が終了後、法令に適合した建物に交付される書類のことを「検査済証」と言います。

実は、中古物件の場合、この検査済証が無い物件というのはかなりの数あります。

建物の検査済証が無い場合、法適合状況調査報告書というものが必要になります。

「検査済証のない建築物に係る指定確認検査機関等を活用した建築基準法適合状況調査のためのガイドライン」

これは、旅館申請する建物が「建築された当時の法律」に違反していないということを証明するものです。

但し、自治体によって法適合状況調査報告書では検査済証の代替にはならないというところもあるかもしれませんので、必ず管轄の保健所にご確認下さい。

 

保健所の検査

保健所の検査旅館業営業許可申請をした後、民泊営業が開始出来るような状態にして保健所の検査を受けます。

(※自治体によっては、消防の検査後に営業開始が出来る状態になる前でも保健所の検査をする場合もあります。)

この検査では、図面では判断できない不具合点なども現地をみて調べます。

その結果、改善指導がされる場合もありますので、指導があった場合は指導に従って改善をおこないます。

保健所は、実際に改善がおこなわれたかの改善確認もおこないます。

 

許可証受領

旅館業営業許可証受領保健所は検査の後に調査書を作成し、旅館業営業の許可決裁をおこないます。

この時に未添付書類などの提出を要求される場合があります。

旅館業の営業要件を全て満たしていると判断された場合、旅館業の営業許可証が交付されます。

全ての書類を提出して保健所の検査が終わってから約3~4週間ほどで、問題がなければ旅館業の営業許可証が交付されます。

※旅館業営業許可申請から3週間~4週間ではないので注意して下さい。

 

営業開始

民泊営業開始先程も少し触れましたが、通常は民泊の営業が出来る状態になってから保健所の検査があり、営業許可が出るという流れになりますが、消防の検査後すぐに保健所の検査という流れの自治体もあります。

「営業が出来る状態」がどのような状態なのかという判断も各自治体で異なります。

「カーテンなどは無くても検査は出来ます。」という自治体もありますので、所轄の保健所に確認してみましょう。

どちらにしましても、保健所から旅館業の営業許可書を取得した時点で営業を開始出来ます。

 

まとめ

まとめいかがでしたでしょうか。

不動産の場合、購入価格もかなりの高額になりますので、民泊目的で購入した物件で民泊が出来なかったとなってしまうと、非常に大きな損失が出る可能性もあります。

今回ご説明した流れでもお判り頂けたかと思いますが、物件購入時に不動産会社さんと旅館業許可取得までのスケジュールや購入するかを決めるタイミング等を細かい打合せをすることが非常に重要になります。

私が旅館業許可申請のご依頼を頂く場合、不動産会社の方(及びリフォーム業者様)と買主様と私の3者で建築計画を建てて、保健所や消防と事前打合せをして、建築計画届を提出した後に審査の可否が出るまで購入決定を待って頂けるかを売主様に打診してもらいます。

もし待って頂けない場合、建築計画届を出したのに物件は売れてしまったとなる可能性もあります。

その場合、建築士の先生への建築計画届作成費用は発生します。

中古物件を購入して民泊を始める場合、「購入したけれど民泊が出来ない」というリスク以外にも、「民泊の許可が出る物件であっても先に購入されてしまうリスク」「物件を購入出来なかったのに建築計画書届作成費用がかかるリスク」なども念頭においておかれる必要があると思います。

 

 

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行政書士・宅建士 横関雅彦
民泊申請専門行政書士・民泊運営コンサルタント。旅館業許可申請などの民泊ビジネスの申請サポート及び運営コンサルタントを行う。宅地建物取引士の資格も持ち、不動産売買の面でも民泊ビジネスをサポート。 また、総合旅行業務取扱管理者の資格も持ち、将来的に旅行業と民泊をつなぐサポートも展開したいと考えている。