民泊新法とは

宿泊施設を提供する「旅館業」に関しては、昭和23年に施行された「旅館業法」によって規定されています。

昭和23年の施行から現在までの約70年の間に、いくつかの改正を経て時代の要求に対応してきました。

しかし、ここにきて外国人観光客の増加などによる宿泊施設の不足、人口減による空き家問題、更にはインターネットという当時はなかったインフラを使った新しいビジネスモデルの出現で、旅館業法の改正だけでの対応が困難になっていました。

住宅宿泊事業法の施行日

そこで、新たに「民泊」という営業形態の宿泊提供に関する法律「住宅宿泊事業法」が施行は2018年6月15日されました。(住宅宿泊事業法案

それに伴い、関連法令も交布されました。

住宅宿泊事業法施行令(2017年10月27日交布)

国土交通省関係住宅宿泊事業法施行規則(2017年10月27日交布)

・「住宅宿泊事業法施行要領(ガイドライン)」(2017年12月26日公開)

住宅宿泊事業法関連の申請書類は『住宅宿泊事業申請書類ダウンロード』のページでダウンロード頂けます。

(旅館業、特区民泊、新法民泊の違いに関しましては『一目瞭然!「旅館業法」「住宅宿泊事業法(民泊新法)」「特区民泊」の比較一覧』でご説明しておりますのでご参照下さい。)

住宅宿泊事業法(民泊新法)とは

住宅宿泊事業法(民泊新法)とは

住宅宿泊事業法(民泊新法)とは、旅館業法で定める3つの営業形態(ホテル・旅館営業、簡易宿所営業、下宿営業)や国家戦略特別区域の特区民泊にはあてはまらない、新しい営業形態である「住宅宿泊事業」に関して規定する法律です。

2017年6月9日に住宅宿泊事業法(民泊新法)が成立しました。(2018年6月15日施行)

「住宅宿泊事業法(民泊新法)」の対象となる民泊サービスは、「旅館業法」の対象外となる条件として、「人を宿泊させる日数として国土交通省令・厚生労働省令で定めるところにより算定した日数が一年間で百八十日を超えないもの」とされています。

住宅宿泊事業法(民泊新法)の対象とする民泊

住宅宿泊事業(新法民泊事業)は、「既存の住宅を1日単位で利用者に貸し出すもので、一年間で百八十日を超えない範囲内で、有償かつ反復継続するもの」となります。

後述します「人を宿泊させる日数が一年間で百八十日を超える施設」は、住宅宿泊事業法(民泊新法)の対象外となり、従来の「旅館業法」に基づく営業許可が必要になります。

住宅宿泊事業法(民泊新法)の基本的な考え方

住宅宿泊事業法の届出住宅

住宅宿泊事業法(民泊新法)の対象となる民泊施設は旅館・ホテルなどの宿泊施設ではなく、あくまで「住宅」という位置付けです。

この後の「住宅宿泊事業(新法民泊)の注意点」で詳しくご説明しますが、この「住宅」という定義をしっかり理解しなければ、後で大変なことになる可能性がありますので、充分ご注意下さい。

民泊施設として提供する家屋の建物用途も「住宅、長屋、共同住宅又は寄宿舎」という扱いになります。

住宅宿泊事業者(家主)、住宅宿泊管理業者、住宅宿泊仲介業者というそれぞれの役割に対する適切な規制を課して、適正な管理や安全面・衛生面を確保するような仕組を構築しています。

さらに、届出や登録によって、行政が住宅宿泊事業者、住宅宿泊管理業者、住宅宿泊仲介業者を把握できるような仕組みになっています。

住宅宿泊事業(新法民泊)の注意点

住宅宿泊事業を始めるにあたって、非常に重要な注意点があります。

住宅宿泊事業で使用できる「住宅」として、住宅宿泊事業法第二条第一項第二号に「人の居住の用に供されていると認められる家屋」と定義されています。

さらに住宅宿泊事業法施行規則第二条で「現に人の生活の本拠として使用されている家屋」「入居者の募集が行われている家屋」「随時その所有者、賃借人又は転借人の居住の用に供されている家屋」と定義されています。

この定義が非常に重要ですので、充分注意して下さい。

それでは、どのように重要なのかをわかりやすくご説明したいと思います。

現に人の生活の本拠として使用されている家屋

「現に人の生活の本拠として使用されている家屋」とは、特定の人が現在生活している家屋を指します。

「継続して生活」というのは、具体的にはその家屋が住民票上の住所となっているようなケースです。

短期的に、ただ住んでいるという場合は「現に人の生活の本拠として使用されている家屋」に該当しません。

入居者の募集が行われている家屋

「入居者の募集が行われている家屋」とは、住宅宿泊事業をおこなっている間、売りに出していたり、賃貸の募集をしていたり、人が居住するための入居者募集をおこなっている家屋を指します。

ここで、注意しなければいけないのが、募集の方法です。

住宅宿泊事業を行うために、入居者が募集しないような不利な条件で募集をしている場合、入居者募集の意図がないということで、「入居者の募集が行われている家屋」には該当しません。

随時その所有者、賃借人又は転借人の居住の用に供されている家屋

「随時その所有者、賃借人又は転借人の居住の用に供されている家屋」とは、生活の本拠として使用されていないものの、少なくとも年1回以上は使用しているような家屋を指します。

ですから、居住としての使用履歴が全く無い民泊専用の新築投資用マンションは「随時その所有者、賃借人又は転借人の居住の用に供されている家屋」に該当しません。

随時居住の用に供されている家屋の具体例

「随時その所有者、賃借人又は転借人の居住の用に供されている家屋」には以下のようなものがあります。

  • 別荘等季節に応じて年数回程度利用している家屋
  • 休日のみ生活しているセカンドハウス
  • 転勤により一時的に生活の本拠を移しているものの、将来的に再度居住の用に供するために所有している空き家
  • 相続により所有しているが、現在は常時居住しておらず、将来的に居住の用に供することを予定している空き家
  • 生活の本拠ではないが、別宅として使用している古民家

その他の重要な注意事項

先程ご説明しましたように、住宅宿泊事業として使用できる「住宅」は、「人の居住の用に供されると認められているもの」です。

人を宿泊させている期間以外の期間に、人の居住以外の事業の用に供されているものは「住宅」に該当しません。

住宅宿泊事業法では営業日数が年間180日以下とされています。

残りの180日を超す期間で、「人の居住以外の事業などをおこなう家屋」では住宅宿泊事業をおこなうことはできないということになります。

住宅宿泊事業(新法民泊)の始め方

新法の民泊を営む人を「住宅宿泊事業者」と言います。

住宅宿泊事業者になるためには届出が必要になります。

(住宅宿泊事業を始めるための申請書は『住宅宿泊事業者申請書類一覧』からダウンロード頂けます。)

届出の内容を見る前に、住宅宿泊事業で民泊として提供する家屋がどのようなものなのかを見てみましょう。

新法民泊で貸し出す住宅

届出ができる住宅

住宅宿泊事業法では、民泊として提供できる家屋は以下のように定義されています。

住宅宿泊事業法 第2条1項 「住宅とは」

一 当該家屋内に台所、浴室、便所、洗面設備その他の当該家屋を生活の本拠として使用するために必要なものとして国土交通省令・厚生労働省令で定める設備が設けられていること。
二 現に人の生活の本拠として使用されている家屋、従前の入居者の賃貸借の期間の満了後新たな入居者の募集が行われている家屋その他の家屋であって、人の居住の用に供されていると認められるものとして国土交通省令・厚生労働省令で定めるものに該当すること

例えば、台所や洗面設備が無い事務所やガレージで使用しているスペースは「住宅」とは認められません。

住宅宿泊事業者の届出内容

あなたのお持ちの物件を住宅宿泊事業の民泊として提供する場合、以下の内容を都道府県知事に届ける必要があります。

(※許可制と届出制の違いは「『許可制」と『届出制』って何が違うの」で詳しくご説明しておりますので、ご参照下さい。)

商号、名称又は氏名及び住所

法人の場合は商号や名称、個人の場合はご氏名での届出をします。

法人又は個人の住所も届出をします。

役員の氏名(法人のみ)

法人である場合においては、その役員の氏名を届け出ます。

個人の場合は役員は関係ありませんので不要です。

法定代理人の氏名・住所(未成年者のみ)

未成年者である場合においては、その法定代理人の氏名及び住所を届け出ます。

法定代理人が法人の場合は、その商号又は名称及び住所並びにその役員のご氏名を届け出ます。

住宅の所在地

営業所又は事務所を設ける場合においては、その名称及び所在地を届け出ます。

住宅宿泊管理業者の商号など

住宅宿泊管理業務を委託する場合は、委託する住宅宿泊管理業者の商号、名称又は氏名、その他省令などで事項の届出をしなければいけません。

住宅図面

届出書には、民泊施設として提供する予定の住宅の図面を添付します。

誓約書

以下の項目に該当しないことを誓約する書面を添付します。

以下の項目のどれかに該当する場合は住宅宿泊事業をおこなうことはできません。

  • 心身の故障により住宅宿泊事業を的確に遂行することができない者として国土交通省令・厚生労働省令で定めるもの
  • 破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者
  • 第十六条第二項の規定により住宅宿泊事業の廃止を命ぜられ、その命令の日から三年を経過しない者(当該命令をされた者が法人である場合にあっては、当該命令の日前三十日以内に当該法人の役員であった者で当該命令の日から三年を経過しないものを含む。)
  • 禁錮以上の刑に処せられ、又はこの法律若しくは旅館業法の規定により罰金の刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなった日から起算して三年を経過しない者
  • 暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律(平成三年法律第七十七号)第二条第六号に規定する暴力団員又は同号に規定する暴力団員でなくなった日から五年を経過しない者(以下「暴力団員等」という。)
  • 営業に関し成年者と同一の行為能力を有しない未成年者でその法定代理人(法定代理人が法人である場合にあっては、その役員を含む。第二十五条第一項第七号及び第四十九条第一項第七号において同じ。)が前各号のいずれかに該当するもの
  • 法人であって、その役員のうちに第一号から第五号までのいずれかに該当する者があるもの
  • 暴力団員等がその事業活動を支配する者

住宅宿泊事業法施行規則

その他の詳細な届出書類に関しましては、住宅宿泊事業施行規則 第4条(届出)に記載されていますので、『住宅宿泊事業法施行規則』もご参照下さい。

「住宅宿泊事業者」とは

住宅宿泊事業者

「住宅宿泊事業者」とは、「届出をして住宅宿泊事業を営む者」と定義されています。

つまり「民泊事業をおこなう人」が住宅宿泊事業者になります。

実際に管理運営を行うのは後述します「住宅宿泊管理業者」になります。

ご自身が届出住宅に住みながら民泊事業を行う場合は、住宅宿泊事業者兼住宅宿泊管理業者となります。

休暇で旅行に行く間貸し出すというような場合は、ご自身では住宅宿泊管理業者にはなれませんので、他の住宅宿泊管理業者に委託をしなければいけません。

家主居住型とは

住宅宿泊事業には「家主居住型」と「家主不在型」の2つの民泊があります。

家主居住型とは、届出住宅に住宅宿泊事業者が居住して不在とならない民泊で、この場合はご自身で管理することができます。

逆に言いますと、不在となる届出住宅の場合は「家主不在型」となりますので、後述します「住宅宿泊管理業者」に届出住宅の管理を委託しなければいけません。

住宅宿泊事業の家主居住型の定義は『家主居住型とは』のページで詳しくご説明しておりますのでご参照下さい。

「不在」とは

ここで「不在」とはどういった状態なのかが、非常に大きな意味を持ちます。

「不在」とは「住宅宿泊管理業者が届出住宅を不在にすること」です。

ですから、住宅宿泊事業者以外の人が届出住宅に居たとしても、住宅宿泊事業者が不在となっている場合は「不在」として取り扱われます。

それでは、どれくらいの時間家をあけている場合に「不在」となるのでしょうか。

これは一概に定めることは適当ではないとされているのですが、原則1時間としています。

諸々の事情を想定しても2時間程度の範囲とされています。

つまり2時間以上家を空けるようなことがある場合、家主不在型とされる可能性があります

住宅宿泊事業者の義務

住宅宿泊事業者(家主)が住宅宿泊管理業者を兼務する場合は、以下のような管理を求められています。

管理運営を他の住宅宿泊管理業者に委託する場合は、委託された住宅宿泊管理業者が以下の管理をおこなうことになります。

宿泊者の衛生の確保

(住宅宿泊事業法 第五条)

住宅宿泊事業者は、届出住宅について、各居室の床面積に応じた宿泊者数の制限、定期的な清掃その他の宿泊者の衛生の確保を図るために必要な措置であって厚生労働省令で定めるものを講じなければならない。

狭い空間に大人数を詰め込むようなことがないように、居室の広さに応じて宿泊者数が定められています。

宿泊者の安全の確保

(住宅宿泊事業法 第六条)

住宅宿泊事業者は、届出住宅について、非常用照明器具の設置、避難経路の表示その他の火災その他の災害が発生した場合における宿泊者の安全の確保を図るために必要な措置であって国土交通省令で定めるものを講じなければならない。

宿泊者の安全確保は住宅宿泊事業法以外に消防法や建築基準法で定められた規定も遵守する必要があります。

外国人観光旅客である宿泊者の快適性及び利便性の確保

(住宅宿泊事業法 第七条)

住宅宿泊事業者は、外国人観光旅客である宿泊者に対し、届出住宅の設備の使用方法に関する外国語を用いた案内、移動のための交通手段に関する外国語を用いた情報提供その他の外国人観光旅客である宿泊者の快適性及び利便性の確保を図るために必要な措置であって国土交通省令で定めるものを講じなければならない。

これは家電製品の使い方や施設までの電車、タクシー、バスなどでのアクセス方法を外国語で説明した案内書を作成するということです。

宿泊者名簿の備付け等

(住宅宿泊事業法 第八条)

1 住宅宿泊事業者は、国土交通省令・厚生労働省令で定めるところにより届出住宅その他の国土交通省令・厚生労働省令で定める場所に宿泊者名簿を備え、これに宿泊者の氏名、住所、職業その他の国土交通省令・厚生労働省令で定める事項を記載し、都道府県知事の要求があったときは、これを提出しなければならない。
2 宿泊者は、住宅宿泊事業者から請求があったときは、前項の国土交通省令・厚生労働省令で定める事項を告げなければならない。
(周辺地域の生活環境への悪影響の防止に関し必要な事項の説明)

住宅宿泊事業者は、宿泊者の氏名、住所、職業などを記載した宿泊者名簿を作成しなければいけません。

宿泊者も氏名、住所などを事業者から聞かれた場合は告げなければいけません。

周辺地域の生活環境への悪影響の防止に関し必要な事項の説明

(住宅宿泊事業法 第九条)

1 住宅宿泊事業者は、国土交通省令・厚生労働省令で定めるところにより、宿泊者に対し、騒音の防止のために配慮すべき事項その他の届出住宅の周辺地域の生活環境への悪影響の防止に関し必要な事項であって国土交通省令・厚生労働省令で定めるものについて説明しなければならない。
2 住宅宿泊事業者は、外国人観光旅客である宿泊者に対しては、外国語を用いて前項の規定による説明をしなければならない。

民泊問題で取り上げられている問題の中でも、特に大きなものが騒音問題です。

外国人宿泊客が理解できるように外国語で近隣住民へ迷惑がかからないよう注意事項を書いて説明をしなければいけません。

苦情等への対応

(住宅宿泊事業法 第十条)

住宅宿泊事業者は、届出住宅の周辺地域の住民からの苦情及び問合せについては、適切かつ迅速にこれに対応しなければならない。

近隣住民からの苦情受付窓口の設置などが必要になります。

標識の掲示

(住宅宿泊事業法 第十三条)

住宅宿泊事業者は、届出住宅ごとに、公衆の見やすい場所に、国土交通省令・厚生労働省令で定める様式の標識を掲げなければならない。

届出物件で民泊をしている旨の標識を掲示しなければいけませんので、近隣に内緒で民泊事業をおこなうことはできません。

「住宅宿泊管理業者」とは

住宅宿泊管理業者

「住宅宿泊管理業者」とは、先程ご説明しました「『住宅宿泊事業法の第五条から第十条までの規定』による業務及び住宅宿泊事業の適切な実施のために必要な届出住宅の維持保全に関する業務をおこなう者」と定義されています。

つまり、「住宅宿泊事業法で定められた規定を守って民泊運営をする者」と言えます。

住宅宿泊事業法(民泊新法)では「住宅宿泊管理業を営もうとする者は、国土交通大臣の登録を受けなければならない。(第22条)」とされています。

(住宅宿泊管理業を始めるための申請書は『住宅宿泊管理業者申請書類一覧』からダウンロード頂けます。)

管理者が上記の業務を怠った場合、業務停止命令、登録取消等の処分、法令違反に対する罰則等もあります。

登録の取消し等

以下のように法令違反となる行為をした場合は、登録の取り消しや業務停止になる可能性があります。

例えば、無許可民泊の運営代行をしていたり、180日を超す営業を行った場合なども対象になる可能性があると思います。

(住宅宿泊事業法 第四十二条)

1 国土交通大臣は、住宅宿泊管理業者が次の各号のいずれかに該当するときは、その登録を取り消し、又は一年以内の期間を定めてその業務の全部若しくは一部の停止を命ずることができる。
一 第二十五条第一項各号(第三号を除く。)のいずれかに該当することとなったとき。
二 不正の手段により第二十二条第一項の登録を受けたとき。
三 その営む住宅宿泊管理業に関し法令又は前条第一項若しくはこの項の規定による命令に違反したとき。
四 都道府県知事から次項の規定による要請があったとき。
2 都道府県知事は、住宅宿泊管理業者が第三十六条において準用する第五条から第十条までの規定に違反したとき、又は前条第二項の規定による命令に違反したときは、国土交通大臣に対し、前項の規定による処分をすべき旨を要請することができる。
3 国土交通大臣は、第一項の規定による命令をしたときは、遅滞なく、その旨を都道府県知事に通知しなければならない。
4 国土交通大臣は、住宅宿泊管理業者が登録を受けてから一年以内に業務を開始せず、又は引き続き一年以上業務を行っていないと認めるときは、その登録を取り消すことができる。
5 第二十五条第二項の規定は、第一項又は前項の規定による処分をした場合について準用する。

再委託の禁止

住宅宿泊管理業者は、委託された管理業務の全部を他の業者に丸投げすることを禁止しています。

仕事だけ取って、後は下請け業者に全部委託するようなことはできません。

住宅宿泊管理業務の再委託の禁止

(住宅宿泊事業法 第三十五条)

住宅宿泊管理業者は、住宅宿泊事業者から委託された住宅宿泊管理業務の全部を他の者に対し、再委託してはならない。

賠償保険の加入

損害賠償保険に関しての詳細はわかりませんが、新聞報道によると「業者に賠償保険への加入を求め、宿泊業者がマンションの共有設備などを壊した場合は確実に償うようにする」とされています。

民泊という新しいビジネスに対して、今後新しいタイプの保険もたくさん出てくるのではないかと思います。

民泊の保険に関しては『民泊で必要な保険』でご説明しておりますので、ご参照下さい。

「住宅宿泊仲介業者」とは

住宅宿泊仲介業者

住宅宿泊事業法(民泊新法)では、旅館業法にはなかった「住宅宿泊仲介業」が新設されました。

「住宅宿泊仲介業」とは、「宿泊者と住宅宿泊事業者との間の宿泊契約の締結の仲介をする事業」を指します。

インターネットサイトなどの民泊仲介事業者が住宅宿泊仲介業者になります。

住宅宿泊事業法では、住宅宿泊仲介業を以下のように定義しています。

住宅宿泊事業法 第二条第八項

この法律において「住宅宿泊仲介業務」とは、次に掲げる行為をいう。
一 宿泊者のため、届出住宅における宿泊のサービスの提供を受けることについて、代理して契約を締結し、媒介をし、又は取次ぎをする行為
二 住宅宿泊事業者のため、宿泊者に対する届出住宅における宿泊のサービスの提供について、代理して契約を締結し、又は媒介をする行為

住宅宿泊仲介業者になるには、観光庁長官への登録が必要になります。

(住宅宿泊仲介業を始めるための申請書は『住宅宿泊仲介業者申請書類一覧』からダウンロード頂けます。)

仲介事業者には消費者の取引の安全を図るため、以下のような義務や罰則があります。

  • 取引条件の説明義務
  • 名義貸しの禁止
  • 行政庁による報告徴収・立入検査
  • 法令違反行為に対すす業務停止命令、登録取消等の処分 など

住宅宿泊事業法(民泊新法)の注意点

住宅宿泊事業法(民泊新法)は「条例」「営業日数の上限」「住居専用地域での営業が可能」という3点が大きなポイントになります。

なぜその3点がポイントになるのかを見てみましょう。

「条例」の注意点

民泊新法(住宅宿泊事業法)では、営業日数を条例で制限することが出来るとされています。

大幅に営業日数を制限された地域では、事実上新法民泊は営業が出来ない可能性があります。

民泊を始めようとする地域の条例で、営業日数の上限を設定されていないかを必ず確認する必要があります。

住宅宿泊事業法では以下のように、一定の要件の下で条例で営業日数の制限を認めています。

(条例による住宅宿泊事業の実施の制限)
第十八条 都道府県(第六十八条第一項の規定により同項に規定する住宅宿泊事業等関係行政事務を処理する保健所設置市等の区域にあっては、当該保健所設置市等)は、住宅宿泊事業に起因する騒音の発生その他の事象による生活環境の悪化を防止するため必要があるときは、合理的に必要と認められる限度において、政令で定める基準に従い条例で定めるところにより、区域を定めて、住宅宿泊事業を実施する期間を制限することができる。

ただし、自治体の規制を最小限とするため、条例で営業を禁止したり、営業日数を制限したりする場合は、区域や期間を具体的に明記するよう規定されています。

また、規制の目的は、「静かな環境を住民が求めている別荘地内での繁忙期」「学校や保育所付近で、長期休暇中を除く月曜日から金曜日まで」のような詳しい内容を記述して、騒音や道路渋滞といった住環境悪化の防止などの範囲にとどめるよう求められています。

「営業日数の上限」の注意点

条例で上限が設定されなくても、最大で180日しか営業ができません。

注意

営業日数に上限が設定されるということは、限られた営業日数で収益を上げなければいけないということになります。

ですから、借りた物件を使って民泊を始めるような場合は採算が合わなくなる可能性があります。

その場合は、「旅館業法の簡易宿所営業の許可」を取得して、旅館業として民泊ビジネスを行うことになります。

  • 180日以下の営業で構わない人→新法の民泊営業
  • 180日以下の営業では採算が合わない人→旅館業又は特区民泊

「住居専用地域での営業が可能」になる注意点

ワンルームマンション民泊

大阪市の特区民泊などでマンションの民泊が出来ない理由として、住居専用地域にある物件というケースがあります。

住宅宿泊事業法(民泊新法)が施行された場合、用途地域の制限がなくなれば、住居専用地域のマンションの民泊営業が急増する可能性もあります。

但し、マンションの場合は法律とは別に「マンション管理規約」という、それぞれのマンションのルールがありますので、管理規約の内容によっては民泊をすることは出来ないというケースもあります。(詳しくは『えっ!民泊が禁止!?マンションの「管理規約」って何?』をご参照下さい。)

マンションでの民泊禁止を検討されている管理組合の方々は、早急に準備を進める必要があると思います。

  • 管理規約で民泊が禁止されていないマンション→新法施行で民泊営業が出来る可能性あり
  • 管理規約で民泊が禁止されているマンション→新法施行でも民泊営業は出来ない可能性が高い

まとめ

まとめ

いかがでしたでしょうか。

「民泊」に関する新しいルール「住宅宿泊事業法」が施行されました。

今までは禁止されていた住居専用地域で民泊営業が出来るようになるなど、全く新しいビジネスとして「民泊ビジネス」が生まれました。

今回の「住宅宿泊管理業」というビジネスも、民泊ビジネスに伴った新しいビジネスです。

こういった新しいビジネスチャンスを活かして、いろいろな業界が活性化されることも期待できると思います。

ただ、反面、近隣住民の方々へ迷惑がかからないような仕組作りも必要になってきます。

「事業者」「宿泊者」「近隣住民」の三方よしとならなければ、いつか歪が大きくなり、大きな問題が発生してしまうと思います。

合法かつ三方よしとなるような「民泊ビジネス」を応援したいと思います。

(※今回ご説明しました「住宅宿泊事業法(民泊新法)」と従来の「旅館業法」「特区民泊」の違いを『一目瞭然!「旅館業法」「住宅宿泊事業法(民泊新法)」「民特区民泊」の比較一覧』のページで、わかりやすくご説明していますので、あわせてご参照下さい。

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