民泊で火災が起こったらどうなるの?【民泊で必要な保険】

[記事公開日]2016/02/10
[最終更新日]2016/05/25
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民泊の保険

何も問題が無い時にはいいのですが、万が一民泊用として貸し出していた時に火災が起こってしまったら、どうすればよいのでしょうか。

「うちは火災保険に入っているから大丈夫!」と言う方もいらっしゃるかもしれませんが、本当に大丈夫でしょうか?

今回は、民泊で火災が起こった場合の保険について考えていきたいと思います。

なお、実際に保険がおりるかは各保険会社の判断になりますので、詳細は保険会社に必ずご確認下さい。

 

建物の用途とは

建築基準法の用途とは『民泊に必要な消防設備』のページで詳しくご紹介しているのですが、宿泊施設として民泊営業をするには、旅館業法適用の無い国家戦略特区であっても、消防法で厳しく消防設備の設置が義務付けられています。(『民泊に必要な消防設備』はこちら)

民泊でどのような消防設備が必要かというのは、建物の中で民泊に使用する部分の面積や割合で決まります。

民泊で使用する部分が建物の半分超の場合は建物全体が「宿泊施設」となり、宿泊施設としての消防設備の設置が義務つけられています。

何故こんな話をするかと言いますと、「火災保険」には、この「用途」が非常に深く関係してくるからなのです。

 

一般住宅用途

建築基準法では、一般的に生活するために住んでいる家は一軒家の場合「一戸建て住宅」、2戸以上で共有部分の無い住宅は「長屋」、マンションなどは「共同住宅」という用途になります。

 

ホテル又は旅館

ホテル旅館業法に基づく「ホテル営業」、「旅館営業」、「簡易宿所営業」を行う施設は「ホテル又は旅館」という用途になります。

ただし、「下宿営業」は「ホテル又は旅館」に含まれず、単独で「下宿」という用途になります。

また会社等の保養所でも、旅館業法の適用が有る場合は「ホテル又は旅館」となります。

 

新しい形態のもの

社会情勢の変化等により建築基準法の用途を決めた時には予測していなかった形態のものもあります。

その代表的なものが、いわゆる「ウィークリーマンション」です。

建物の形態的には共同住宅になりますが、使用形態は旅館に近いと思われます。

そこで各自治体がどちらの用途に該当するかを条例で決めています。

ある自治体では、建築基準法における用途制限については、旅館業法の適用があるものは、「ホテル又は旅館」として扱い、同法の適用がないものは、「共同住宅」として扱うこととされています。

 

賃貸火災保険とは

賃貸火災保険とは、一般的に「一戸建て住宅」「長屋」「共同住宅」のような「一般住宅」の用途の建物にかける保険です。

「賃貸火災保険」には、大きくわけて「家財保険」と「借家人賠償責任保険」の二つがあります。

 

家財保険とは

「家財保険」は、借主(入居者)が所有する家電、家具などの損害を補償するものです。

補償される損害原因は、火災、落雷、爆発、水害、水漏れなどがあります。

また、家財や現預金の盗難も対象となるものもあります。

それ以外にも細かい補償内容は契約によってことなりますが、借主が「自分の財産のために入る保険」と考えれば良いと思います。

 

借家人賠償責任保険とは

火事これに対して「借家人賠償責任保険」は、大家さんのための保険です。

民法では、「失火責任法」といって、失火者に重大な過失がなければ、損害賠償責任を負わせないことになっています。

これは「賃借人が失火してしまっても、重大な過失がなければ自分が原因で火事になって部屋が燃えてしまっても、大家さんに損害賠償をしなくても良い」と言う事です。

しかし、それでは大家さんがあまりにかわいそうですよね。

民法では、この失火責任法とは別に、賃借人が退去する時の「原状回復義務」を課しています。

原状回復とは借りた時と同じ状態で返すという意味です。

ですから、結局、退去する時に大家さんに対して賠償と近いようなことをしなければいけないのです。

その原状回復するための費用を補償するというものが「借家人賠償責任保険」なのです。

 

旅館賠償責任保険とは

旅館賠償責任保険とは、旅館業者やホテル業者が営業で生じた事故によって、宿泊客に対して法律上の賠償責任を負担した場合の損害賠償金等を払うような保険が一般的です。

旅館業賠償責任保険には、通常「旅館業法(昭和23年法律138号)第3条に規定する営業許可を得ている施設に限ります。」といった条件が付いていますので、旅館業登録していない施設の場合は加入出来ません。

火災などの細かい内容に関しては個々の保険会社の担当者に直接問い合わせて内容を確認するしかないのですが、一般家庭の火災保険とは内容も金額も全く異なるというケースも少なくありません。

不特定多数の人が宿泊するというのは、一般家庭と比べると遥かに火災などのリスクも高くなりますので、保険の条件や金額が高くなるのでしょう。

 

旅館業登録をしていない宿泊施設の火災の場合

旅館業法違反一定の条件で宿泊施設を提供する場合は旅館業法に基づく旅館業登録が必要です。(旅館業法に関しては『旅館業法とは』をご参照下さい。)

旅館業登録をせずに、旅館業に該当する行為をしていた場合は違法行為となります。

東京都千代田区のホームページでは以下のように、一定基準を満たしていない「民泊」は旅館業法違反と明記されています。

民泊サービスの提供について

自宅の一部や別荘、マンションの空き室などを活用し、宿泊サービスを提供するいわゆる「民泊」については、旅館業法違反です。

(参考)厚生労働省通知「旅館業法の遵守の徹底について」「旅館業法に関するQ&A」

このような違法行為で宿泊施設を貸し出して火災が発生した場合、保険が適用されない可能性もあると思います。

 

自宅の一部を民泊で貸している場合の火災

「火災保険に入っている自宅を貸しているんだから大丈夫!」と思っている方は注意してください。

保険会社に民泊として利用していても保険金がおりるか、きちんと確認しておく必要があります。

保険会社にもよりますが、自宅の一部を民泊として貸し出している場合、居住部分のみが保険の対象になる場合があります。

その場合は居住部分しか保険に入れませんので、火災で焼失した民泊での使用部分は補償されません。

保険は会社によって細かい条件が異なりますので、必ず細かい条件まで保険会社の担当者に確認することをお勧めします。

 

各保険会社の対応

書面実際に数社の保険会社に民泊営業で火災保険に入れるかを質問してみました。

私が聞いたところは、全て民泊の火災保険は加入出来ないという回答でした。

少し気になったのは、旅館やホテル向けの保険であっても民泊の場合は加入出来ないという回答があったところです。

簡易宿所営業の許可を取っていれば旅館業法上の旅館等に該当するので、保険は入れそうな気がするのですが、ここまでの細かい定義まで確認されていないのかもしれません。

この点を曖昧にしていると、簡易宿所営業の許可を取って旅館業用保険に加入して火災が発生した場合、「民泊だから保険はおりません」とならないとも限りません。

保険の契約をする時点で「民泊ですけれど、旅館業法の簡易宿所営業許可をとった宿泊施設です。」と説明して、きちんと保険がおりるという事を確認した上で、その内容を書面でもらっておくのが良いと思います。

 

 まとめ

まとめいかがでしたでしょうか。

民泊を始めるには旅館業登録(又は民泊特区では自治体への民泊登録)をせずに、違法状態で部屋を貸し出していると、万が一火災のような事故があった時に大変なことになる可能性があるということをご理解いただけたかと思います。

民泊に関しては、旅館業法の簡易宿所、国家戦略特区の特区民泊に加えて、現在法案を検討している新法の民泊など、一言で「民泊」といっても、要件となる消防設備が異なるさまざまな民泊があります。

このような状態ですので、保険会社としても対応が難しく、「当面は民泊は保険対象外」というスタンスを取られる保険会社も多いと思います。

ただ、民泊新法が出来ても減らないのではないかと懸念されている無許可のヤミ民泊は、火災などのトラブルが起こった時に本当に危険です。

2015年7月には民泊利用者と思われる外国人の死亡事故(『民泊のトラブル事例』参照)もおこっています。

不測の事態に対処出来るように、法令を遵守した営業を行う必要はますます高まっていると言えます。

民法では、火を出した人(失火者)に重大な過失がなければ、損害賠償責任を負わせないことになっています(失火責任法)が、内緒で民泊営業をしていたとなると、これが「重大な過失」と判断されてしまう可能性もあると思います。

保険は万が一の事態に備えるためにも非常に重要ですので、民泊を始める際には保険会社の方に十分ご相談されることをお勧めします。

※保険内容や保険金が支払われる条件は各保険会社の判断になりますので、詳細は保険会社に必ずご確認下さい。

 

 

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行政書士・宅建士 横関雅彦
民泊申請専門行政書士・民泊運営コンサルタント。旅館業許可申請などの民泊ビジネスの申請サポート及び運営コンサルタントを行う。宅地建物取引士の資格も持ち、不動産売買の面でも民泊ビジネスをサポート。 また、総合旅行業務取扱管理者の資格も持ち、将来的に旅行業と民泊をつなぐサポートも展開したいと考えている。