一目瞭然!「旅館業法」「民泊新法」「民泊条例」の比較一覧

[記事公開日]2016/05/16
[最終更新日]2016/12/05
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旅館業法民泊条例民泊新法比較

最近、「民泊に興味があるのですが、何から始めたらいいでしょうか?」というご質問をよく頂きます。

今までインターネットの仲介サイトを利用して個人宅を貸し出すようなビジネス(新しいタイプの民泊)が無かったため、新しいタイプの民泊の法整備をおこなうため、2015年11月から政府の検討会が定期的に開かれるようになりました。

その法整備の準備と並行して、国家戦略特区での民泊条例の施行や、従来の旅館業法の一部緩和などがあり、「民泊を始めるには、どうしたらいいのか!?」が、ますますわかり難くなっています。

そこで、2016年末までに国会提出を目指している法案(仮称で「民泊新法」と呼びます)の検討内容と、既に施行されている民泊条例と2016年4月に緩和があった旅館業法の内容を比較しながら、民泊に関する法令を、わかりやすくご説明したいと思います。

今後も、民泊新法案の検討内容は随時加筆修正していきますので、是非定期的に、このページをチェックして下さい。

 

旅館業法・民泊新法・民泊条例比較一覧

まずは、旅館業法で規定されている「簡易宿所営業」と現在検討されている民泊新法の「家主居住型」と「家主不在型」と大阪府の民泊条例で規定されている宿泊施設提供条件の一覧をご覧ください。(※民泊新法の「家主居住型」と「家主不在型」は『民泊新法とは』をご参照下さい。)

民泊新法の内容は検討内容ですので、確定したものではありません。

変更や追加がありましたら、随時加筆修正致しますので、現時点の参考としてご覧下さい。

 

旅館業法 民泊新法(検討中) 民泊条例
簡易宿所営業 家主居住型 家主不在型 大阪府
行政への手続者 事業者 家主 管理者 事業者
行政への申告 許可 届出 登録 認定
営業日数上限 なし 180日 180日 なし
宿泊日数制限 なし なし なし 2泊3日以上 ※1
宿泊者人数制限 なし 4~無制限 4~無制限 なし
苦情受付者 事業者 家主 管理者 事業者
フロント設置 原則なし ※2 なし なし なし
居室の床面積 3.3㎡以上 ※3 なし なし 25㎡以上
行政の立入検査 あり あり あり 条例で制定
住居専用地域
での営業
× × ※4
自動火災報知機 未定 未定
契約形態 宿泊契約 宿泊契約 宿泊契約 賃貸借契約
目的 投資収益 文化交流 休眠地活用 投資収益
収益性

※1 2016年9月9日の国家戦略特別区域諮問会議で決定。
※2 条例でフロント設置を義務付けている自治体もあります。
※3 宿泊者の数が10人未満と申請された簡易宿所。
※4 条例で特区民泊の用途地域制限をなくしている自治体もあります。

この一覧から、民泊を始めようと考えている目的によって、どのタイプの民泊を選べばよいかが決まってきます。

 

文化交流を目的として民泊を始めたい人

利益は目的ではなく、外国の人との異文化交流を目的として民泊を始めたいという方は「民泊新法の家主居住型」が最適です。

家主居住型民泊は、許可ではなく、行政への届出で民泊を始められますので、比較的手軽に始めることが出来ます。

但し、宿泊者名簿の作成や最低限の衛生管理措置、安全の確保などの条件はあります。

民泊新法では、営業日数の上限が設定される予定ですので、新法の民泊では、大きく利益を出すビジネスとしての民泊は向いていません。

しかし、利益が目的ではなく異文化交流が目的の人は、家主居住型の民泊がよいかと思います。

 

自己所有の遊休・休眠資産を活用して民泊を始めたい人

相続した田舎の実家がずっと空き家のまま放置しているので、少しでも活用したいという人には「民泊新法の家主不在型」が最適です。

家主不在型の場合、行政に登録した「管理者」と呼ばれる業者に運営を委託しなければいけません。

家主居住型と同様に営業日数の上限がある上に、管理者への委託費用がかかりますので、民泊で収益を上げることは難しいかもしれません。

賃貸とは違って、自分達が住むことになった時に立ち退きでもめるようなことがないというメリットもあります。

とりあえずは空き家の維持費用+αの収益が出ればOKという方は、家主不在型での民泊をご検討されるのも良いかと思います。

 

投資目的で民泊を始めたい人

不動産を購入したり、賃貸物件を使って(転貸して)民泊を始める人は、従来の「旅館業法の簡易宿所営業」の許可をとって民泊を始めることが一つの選択肢になると思います。

簡易宿所は住居専用地域では原則として営業が出来ない点や消防設備などの面で厳しい条件がありますので、ある程度大きな初期投資をして、回収していくようなイメージになります。

民泊新法では、営業日数の上限が180日以下に定められる予定です。

そうなると物件購入費用又は月々の賃貸費用と初期投資費用を回収することが出来ないというケースもあると思います。

しかし、180日以外の日数は賃貸借契約で活用するなど、民泊と賃貸借契約を組み合わせることで、ビジネスとして成り立つ可能性もあります。

つまり、新法民泊で投資する場合は、民泊以外に施設をどれだけ上手に活用できるかが、ポイントになると思います。

詳しくは『新法民泊ビジネス「チャンス」と「アイデア」』でご説明していますので、ご参照下さい。

 

それでは、「旅館業法」「民泊新法」「民泊条例」がどのように違うのかを、項目ごとにみていきましょう。

 

行政への手続者

民泊ビジネスを始めるためには行政への手続が必要になります。

旅館業の営業や国家戦略特区での特区民泊を行う場合は、事業を行う者が許可申請を出します。

それに対して、民泊新法の家主居住型民泊では、宿泊施設提供者、つまり家主が届出を行うことを検討しています。

家主不在型では「管理者」と呼ばれる業者が、行政に登録することを検討しています。(※「管理者」に関しては『民泊の管理者とは』をご参照下さい。)

 

行政への申告形態

行政への届出旅館業(簡易宿所)の営業を始めるためには、旅館業の営業「許可」が必要です。

国家戦略特区で民泊条例が施行されている地域では、民泊(特区民泊)の営業には「認定」が必要です。

「許可」というのは、「基本的にはおこなってはいけない事をおこなっても良いと認定する行為」です。

「認定」というのは、「国・地方公共団体などの行政機関が、各種の事柄の存否・当否などを判断して決定する行為」です。

つまり、行政に民泊の営業を始めるための申請して、旅館業法の簡易宿所は「許可」、民泊条例の特区民泊は「認定」がなければ、民泊の営業はおこなってはいけないのです。

一方、民泊新法で検討されている家主居住型では、家主の「届出」が必要とするように検討されています。

家主不在型では、「管理者」と呼ばれる業者への管理委託を必要とされます。

この管理者が行政への「登録」を義務付けられる予定です。(管理者の登録だけではなく、家主か管理者のどちらかが行政へ民泊施設の届出を行うようなかたちになる可能性はあります。)

「届出」や「登録」は、「基本的におこなっても良い行為だけれども、おこなうことの通知を求める行為」です。

ですから民泊新法の場合、「届出」や「登録」をすれば、民泊ビジネスを始められるということになります。

これは非常に大きな違いだと言えると思います。

(「許可制」と「届出制」の違いは『「許可制」と「届出制」って何が違うの?』で詳しくご説明していますので、ご参照下さい。)

 

滞在期間の条件

旅館業の簡易宿所と民泊新法の新法民泊では、1泊2日から宿泊施設を提供することができます。

民泊条例の特区民泊には「滞在期間の条件」があります。

民泊条例が制定された2015年当時は「6泊7日以上」という滞在期間の条件が設けられていました。

1カ所で6泊以上も滞在するという外国人観光客はほとんどいないため、特区民泊の営業認定申請は数件しかされず、特区民泊の制度はほとんど活用されないという状態でした。

そのような制度が活用されていない状態を改善するため、2016年9月9日の国家戦略特別区域諮問会議で、特区民泊の滞在期間の条件を6泊7日から2泊3日に緩和することが決定されました。

 

営業日数制限

旅館業(簡易宿所)や特区民泊には営業日数に制限はありませんが、民泊新法では営業日数の上限設定が検討されています。

海外ではイギリスが年間90泊以内、オランダのアムステルダムが年間60泊以内という上限を設定しています。

第10回目の「民泊サービス」のあり方に関する検討会では、全国旅館ホテル生活衛生同業組合連合会から、年間30日を基本にして上限を設定するよう要望が出されています。

公益社団法人全国賃貸住宅経営者協会連合会からは、以下のように「家主不在型の賃貸マンションを民泊利用した場合の収支状況」ということで、実際の収支を分析した上で、家主不在型で180日以下の営業日数制限を設定した場合、ビジネスとして参入出来ないという報告があります。

民泊新法では、この営業日数制限が最も大きなポイントになると思います。

2016年5月19日の規制改革会議答申で、営業日数上限を「180日以下」とする条件が打ち出されました。

イギリスやオランダのアムステルダムなどの例を参考にして、90~180日の間で調整が進む可能性が高いとされています。

収支状況

 

宿泊者人数制限

宿泊人数制限簡易宿所や特区民泊には同時に泊まる宿泊者数の制限はありません。

民泊新法の検討会では、宿泊人数が増えれば公衆衛生上のリスクは高まるという懸念から、1日当たりの宿泊人数の制限は必要だという意見があります。

海外では、オランダのアムステルダムで同時宿泊者4人以内、ドイツのベルリンでは同時宿泊者8人以内という制限を設けています。

ニーズを考慮して上限を4人よりも増やすべきという意見はありますが、「同時宿泊者の上限を設定する」という点では概ね同意されているようです。

 

苦情受付者

苦情受付簡易宿所や特区民泊は事業者として営業許可を受けていますから、当然、苦情を受け付けるのは事業者になります。

民泊新法の家主居住型では、家主が宿泊施設に住んでいますので、家主が苦情を受け付けることになります。

それでは、家主がいない家主不在型の宿泊施設に対しての苦情は誰に言えばいいのでしょうか。

家主不在型の場合、その施設を管理する旨を行政に登録した「管理者」が苦情を受け付けるよう検討されています。

家主不在型民泊では、この「管理者」が大きなポイントになります。

(※「管理者」に関しては『民泊の管理者とは』をご参照下さい。)

 

フロント設置義務

従来、簡易宿所ではフロントの設置義務がありましたが、2016年4月に、収容定員が10人未満の施設であって、以下の要件を満たしているときは、フロント設備は不要という条件に緩和されました。

(要件1)玄関帳場等に代替する機能を有する設備を設けることその他善良の風俗の保持を図るための措置が講じられていること。

(要件2)事故が発生したときその他の緊急時における迅速な対応のための体制が整備されていること。

民泊条例、民泊新法ではフロントの設置は義務付けられない動きだと思います。

 

客室の延床面積

ワンルームマンション民泊旅館業法の簡易宿所は「客室の延床面積は、三十三平方メートル以上であること」とされていましたが、これも2016年4月に「客室の延床面積は、三十三平方メートル(収容定員が十人未満の場合には三・三平方メートルに収容定員の数を乗じて得た面積)以上であること」に緩和されました。

つまり10人未満の宿泊施設であれば、宿泊者1人当たり3.3㎡の延床面積があればよいということになります。

民泊条例では、25㎡以上とされていますので、規制緩和後の旅館業法よりも厳しい条件となります。

民泊新法では、出来る限り緩和を進めるというスタンスですので、旅館業法と同程度になるのではないかと思われます。

 

行政の立入検査

立入検査民泊新法の家主居住型民泊及び家主不在型民泊の全てが行政庁による報告徴収・立入検査がおこなえる方向で進められています。

違法な営業をチェックするためにも、この報告徴収や立入検査がおこなえるようにしておくことは重要だと思います。

特区民泊に関しては「立入検査権限は、特定認定(民泊の旅館業法適用除外)の取消事由への該当性を判断する時に限って条例で制定できる」とされています。

 

用途地域制限

用途地域制限民泊ビジネスを始めるにあたって、問題になるのが用途地域です。(詳しくは『用途地域とは』をご参照下さい。)

旅館業法の簡易宿所は、原則としてホテルや旅館が建てられる地域でしか営業をすることは出来ません。(例外である特別用途地区に関しては『特別用途地区とは』をご参照下さい。)

国家戦略特区の特区民泊も原則としては、ホテルや旅館が建てられる地域でしか営業をすることは出来ません。(条例で用途地域を越えて営業を認める事も出来ます。詳しくは『大阪府の民泊条例に対する市町村の反応』をご参照下さい。)

民泊新法では、基本的に既存の住宅を貸し出すことを前提としていますので、用途地域制限に関しては、旅館業法や民泊条例よりも緩和される可能性があるかもしれません。

「既存の住宅=民泊」という解釈になると、住居専用地域での営業も可能ということになります。

2016年5月19日の規制改革会議答申で、いまは禁じている住宅地での営業を容認する方向で進むと言う発表がありましたので、新法では一定の要件を満たした場合は、住居専用地域でも営業が出来る可能性が高いと言えます。

 

自動火災報知機の設置義務

旅館業法や民泊条例では、以下のような消防設備の設置が義務付けられています。

特に、自動火災報知機などは設置に費用がかかることから、民泊を始めるにあたっての大きな負担になっています。

民泊新法の案では、今のところ具体的な消防設備の規定は出てきていませんが、安全を担保しながら、費用をおさえられるかたちでの規制になれば、民泊ビジネスを始めるハードルが大きく下がるのではないかと思います。

外国人滞在施設の消防法令への適合

 

契約形態

契約書旅館業法の簡易宿所に泊まる場合、1泊2日で部屋に泊まるというような「宿泊契約」になります。

民泊新法でも1泊2日の宿泊から出来るようになる予定ですので、その場合は「宿泊契約」になります。

ところが、特区民泊の場合は「賃貸借契約」といって、建物を賃借する契約になります。

賃貸借契約の場合、契約毎に契約書の作成が必要になるなど、作業が煩雑になると言えます。

 

まとめ

まとめいかがでしたでしょうか。

民泊に関する法令の整備は現在進行形で進んでいます。

ビジネスチャンスをつかむには一早くビジネスを始めることも大事だと思いますが、民泊ビジネスように今後規制緩和が見込まれる場合、その動きを見ながら、じっくりと検討することも大事なのかもしれません。

簡易宿所、特区民泊に加えて現在法案を検討されている新法で規定される民泊のどれが一番良いのかは現時点ではわかりません。

それぞれの住み分けが出来ると思いますので、ご自身のビジネスモデルに合ったタイプの民泊営業を選ばれるのが良いかと思います。

今回お話しました「旅館業法」「民泊条例」「民泊新法」に関しましては、以下のページで、それぞれ詳しくご説明しておりますので、あわせてご参照頂けましたら幸いです。

旅館業法とは

民泊条例とは

(※民泊条例で定めている「特区民泊(国家戦略特別区域外国人滞在施設)」に関しては『特区民泊とは』で詳しくご説明していますので、ご参照下さい。)

民泊新法とは

民泊新法に関しましては、法案成立まで、随時情報を更新していきたいと思います。

 

 

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行政書士・宅建士 横関雅彦
民泊申請専門行政書士・民泊運営コンサルタント。旅館業許可申請などの民泊ビジネスの申請サポート及び運営コンサルタントを行う。宅地建物取引士の資格も持ち、不動産売買の面でも民泊ビジネスをサポート。 また、総合旅行業務取扱管理者の資格も持ち、将来的に旅行業と民泊をつなぐサポートも展開したいと考えている。