ウィークリーマンションの旅館業登録

民泊に関して旅館業法が注目されていますが、過去にも何度か旅館業法の適用を巡って議論が交わされたことがあります。

それは「ウィークリーマンション」と「インターネットカフェ」「漫画喫茶」が出てきた時にも、旅館業許可が必要か不要かで議論になりました。

それでは、「民泊」と比較的近いと思われる形態で運営しているビジネスモデルで、どんな場合に旅館業許可が必要で、どんな場合に不要なのかを見ていきたいと思います。

 

旅館業登録が必要な場合とは

「宿泊料を受けて人を宿泊させる営業」を行う場合、旅館業許可が必要になります。

具体的にどのようなことかと言いますと、有償で寝具などを備えた部屋を何度もいろんな人に繰り返し貸すような場合、旅館業許可が必要になります。

旅館業とは』で詳しくご説明していますので、是非ご参照下さい。

 

一時使用目的の建物賃貸借

一時使用目的の賃貸借とは一般の賃貸住宅は数年単位で契約するものですが、災害での仮住まいや建て替えの間の仮住まいのように、期間を決めて一時的に建物を使用する場合の契約を「一時使用目的の建物賃貸借」といいます。

一時使用目的の賃貸借契約は、借地借家法の規定が適用されるのではなく、一般法である民法の規定が適用されることになります。

「ウィークリーマンション」は一般的には一時使用目的の建物賃貸借契約になります。

ただ、ウィークリーマンションの中には、一時使用目的の賃貸借ではなく旅館業登録をしているものもあります。

旅館業登録をしている場合は問題ないのですが、一時使用目的の形態で賃貸している場合は、宿泊日数や寝具の提供、部屋の維持管理、契約形態などのさまざまな条件があります。

「それなら旅館業登録をすればいいじゃないか」と思われるかもしれませんが、旅館業登録は消防設備や建築基準法、その他床面積、男女別トイレの設置など、さらに厳しい条件が決められていて、簡単に登録することが出来ないのです。

(旅館業の登録の要件は『旅館業の許可要件』で詳しくご説明しています。)

ここでは旅館業登録をしないで運営している「一時使用目的の建物賃貸借」の条件を見ていきたいと思います。

 

ウィークリーマンションの定義

昭和六二年一二月二五日の厚生省生活衛生局指導課長あて東京都衛生局環境衛生部長照会で以下のように記載されています。

近年、社会需要の多様化に伴つて、新たな営業形態を持つ施設が出現しており、本件もいわゆるウィークリーマンションと称する短期宿泊賃貸マンションとでもいうべき施設で、旅館業と貸室業の中間的な営業形態をもつものと考えられます。

旅館業法の運用にあたつては、昭和六十一年三月三十一日付衛指第四四号厚生省生活衛生局指導課長通知が示されているところですが、本件の旅館業法上の取り扱いについて疑義が生じたため、至急ご回答願います。

(施設の状況及び管理等)

  1. 施設は既存のアパート、マンションの空室又は専用に建築した室を賃貸する。
  2. 利用日数の単位は、一週以上とし最長制限の定めはないが、実態としては一~二週間の短期利用者が大半である。
  3. 利用者は手付金を支払つて予約し、入居時までに物品保証金及び利用料等を支払い賃貸契約を締結した上、入居する
  4. 客室には日常生活に必要な設備(調理設備、冷蔵庫、テレビ、浴室、寝具類等)が完備している。
  5. 室内への電話器、家具等の持ち込みは禁止している。
  6. 利用期間中における室内の清掃等の維持管理は、全て利用者が行う
  7. シーツ、枕カバーの取り換え、浴衣の提供等リネンサービスは行わない。なお、利用者からの依頼があれば請け負い会社を斡旋する
  8. 食事は提供しない。
  9. 光熱水費は各個メーターで契約解除時に別途清算する。
  10. 本施設の利用者は、主として会社の短期出張者、研修生、受験生等である。

ウィークリーマンション旅館業の許可が不要となる重要なポイントとしては「1週間以上の滞在」「賃貸契約の締結」「利用期間中の部屋の管理は利用者」という点でしょうか。

そして、「リネンサービスは行わない」けれども「依頼があれば請負会社を斡旋する」という部分は、なんとも曖昧な感じがします。

これはシーツを変えたりする会社に依頼するの、貸主ではなく借主が手配すれば良いとも取れるように思います。

しかし、基本的には実態をみて行政が判断しますので、ご自身の判断で旅館業に該当しないから申請しないということは危険ですので、絶対にやめた方が良いと思います。

上記のように定義をされていても「基本的にウィークリーマンションは旅館業の許可が必要」と考えておかれた方が良いと思います。

大阪市では「旅館業施設と紛らわしい内容を標榜すること(ネット広告なども含む)」も旅館業法違反になるおそれがあるとしています。

旅館業施設と紛らわしい内容とは、「安く泊まれます」「お泊りできます」「一泊 ○○○円」「休憩 ○○○円」「旅行者向け民泊」「簡易宿泊所」「簡易宿泊施設」「簡易宿所型ゲストハウス」「寝具の完備」などを指しています。

ウィークリーマンションで、こういった表記をすると旅館業法違反になるおそれがあります。

 

ネットカフェ・漫画喫茶

漫画喫茶ネットカフェや漫画喫茶は旅館業法の対象ではないとされています。

ネットカフェで朝まで寝るという利用客は多いのですが、ネットカフェは「ネットをする場所の提供、漫画喫茶は「漫画を読む場所を提供」しているので「宿泊サービス」ではないということなのです。

料金は「ネット利用料金」又は「漫画を読むための料金」なので「宿泊料」ではないという判断になります。

また、ベットを備え付けているわけではないので、ソファーなどで朝まで寝ても寝具の提供とまでは言えないという判断のようです。

ちなみに、大阪市ではネットカフェやマンガ喫茶に対しても「旅館業施設と紛らわしい内容を標榜すること(ネット広告なども含む)」も旅館業法違反になるおそれがあるとしています。

「ゆっくり眠れます」「仮眠できます」「安く泊まれます」「お泊りできます」「一泊 ○○○円」「休憩できます」「モーニングコールします」「ホテル並みの客室あります」のような表現をした場合、旅館業法違反になるおそれがあります。

 

ゲストハウス

ゲストハウスゲストハウスは、風呂や台所等を共用する宿泊施設で個室の場合と数人が一緒に宿泊するドミトリータイプがあります。

どちらにしても「宿泊料を受けて人を宿泊させる営業」に当たる場合は旅館業登録が必要です。

ただし、長期で借りるシェア型ゲストハウスは、マンスリーマンションと同じく定期建物賃貸借契約を結ぶケースが一般的で、その場合は旅館業登録は必要ありません。

 

ホームステイ

ホームステイ宿泊者が生活拠点を宿泊している場所に置いている場合は旅館業にはなりません。

極端な例を上げますと、3泊するホテルに住民票を移すようなことはありませんよね。

ホームステイの場合は、泊まっている家に宿泊者の生活の拠点があるという理由で、旅館業には該当しません。

この場合、旅館業ではなく賃貸借となります。

 

まとめ

まとめいかがでしたでしょうか。

ウィークリーマンションやネットカフェのように新しいビジネスモデルが出てきた時に、既存の法律にどう適用するかが行政も企業側も試行錯誤してルールを作ってきたのを感じられたのではないでしょうか。

今回は触れませんでしたが、カプセルホテルが出てきた時も、それまでに無いビジネスモデルということで旅館業法の解釈で議論が起こったそうです。

今話題になっている「民泊」もまさにそういった新しいビジネスモデルですので、まさに新しいルール作りに行政も動いています。

みんなが安全で便利なビジネスモデルになるように「民泊」のルールも進められていくと思います。