2016年5月9日に京都市の民泊施設実態調査がホームページで公開されました。
京都市は民泊の実態調査にかなり力を入れています。
調査期間
平成27年12月1日から平成28年3月31日まで
調査対象サイト
京都市内における掲載件数が10件以上確認された7つの仲介サイト(以下1から7)及び,調査時点において日本法人によって運営されている唯一の仲介サイト(以下8)の計8サイトを調査対象としている。
今まではAirbnbのみの調査という自治体が多かったのですが、京都市の今回の調査は急激に増えているAirbnb以外のサイトも調査対象としている点に本気度を感じます。
- Airbnb(本社:サンフランシスコ)
- VRBO(本社:シンガポール)
- Booking.com(本社:アムステルダム)
- とまりーな(本社:日本・仙台)
調査結果
かなり詳細に報告をされていますが、ここでは簡単に結果をご紹介します。
詳しくは下記の報告書をご参照下さい。
区ごとの施設数と施設のタイプ
調査対象になった施設は市内には2,702件あり、各区の施設数は以下のようになっています。
- 下京区(599件 22.2%)
- 中京区(470件 17.4%)
- 東山区(445件 16.5%)
上記の3区(1,514件 56.0%)で半数以上を占めているという結果になっています。
施設タイプ
- 戸建住宅 935件(34.6%)
- 集合住宅(マンション) 1,677件(62.1%)
全体のおよそ3分の2が 集合住宅(マンション)となっています。
貸出形態
- 戸建て住宅:一棟貸し約60%、部屋貸し約40%
- 集合住宅:一戸貸しが約90%、部屋貸し約10%
行政区別の特徴としては、左京区に戸建ての住宅の部屋貸しが多く、東山区に戸建て住宅の一棟貸しが多いことが挙げられています。
旅館業法の許可の有無
旅館業法の許可の有無、つまり合法で民泊を行っている施設がどの程度あるのかも調べられています。
調査の結果、所在地の特定ができたのは1,260件(46.6%)で、そのうち、旅館業の許可が確認できたものは189件(7%)と言う結果となっています。
つまり明らかに合法に民泊営業をしていると確認できた施設は7%しかなかったということになります。
また、無許可と思われる施設は1,847件(68.4%)と推測されるとしています。
※2018年に施行された住宅宿泊事業法により、旅館業法の許可がなくても、民泊ビジネスが可能になりました。
施設周辺の住民に対するヒアリング
民泊で苦情などのトラブルの原因となる、近隣住民からのヒアリング結果も報告されています。
ヒアリングは市内民泊施設のうち、戸建て住宅20件と集合住宅20件を抽出して、その施設周辺の住民に対して行なわれました。
全体的な傾向
- 施設周辺の住民は民泊施設の開業に当たっての事前説明をされていない。
- 「管理者が常駐せず」「誰がどのように運営をしているか分からない」「トラブル時の連絡先も分からない」ことなどが周辺の住人の不安を更に増大させている。
- 外観からは宿泊施設であるかどうか判別はできず宿泊客が迷うケ ースもある。
- 施設が周辺住民に及ぼす影響は周辺の住民の生活様式等によっても大きく異なってくる。
- 施設が周辺住民に及ぼす影響は運営者の管理能力によるところが大きい。
戸建て住宅における傾向
- 集合住宅の施設と比較して、多くの人数が宿泊可能なため騒音につながりやすい。
- 特に連棟になっている場合や路地奥にある施設における騒音は深刻であり、宿泊者のいびきで眠れないというケースもある。
- 路地奥での施設については火災の心配の声が多く聞かれた。
- 運営者からの説明や問い合わせ先の開示を受けていない場合は、トラブル時に苦情を伝える先がないため宿泊客本人に直接訴えるか警察に通報するかしか手段がない。
集合住宅における傾向
- 不特定多数の観光客が宿泊することでオートロックの意味がなくなっていることに多くの住人が不安を感じている。
- ごみや騒音などの具体的な迷惑行為があるという声は多くはなかった。
- 1つの集合住宅で多数の民泊が運営されている物件においては、ごみ問題、騒音、深夜にインターホンを間違って鳴らされたなどの具体的な迷惑を被っているという声もあり、物件からの退去を考えているという住人もいる。
- 単身世帯用の物件であれば住人が民泊施設に気づいていないケースも見られる。
- 大型の単身世帯用物件になればその傾向は更に強まる。
- 集合住宅の住人が苦情を訴えても、対応しない不動産管理会社もある。
京都市からAirbnbへ要請
今回の調査結果をふまえて、2016年5月11日の定例記者会見で、京都市の門川大作市長は、マンションや自宅の一部を貸す「民泊」の仲介サイト最大手「Airbnb(エアビーアンドビー)」に対し、旅館業法の許可を得ていない物件はサイトから削除するよう文書で要請したことを明らかにしました。
Airbnb社の日本法人に対して、無許可の物件をサイトから削除するよう求めたそうです。
さらに、サイトに掲載している物件の詳細な情報を市に提供することや、民泊施設の運営者(ホスト)に法令順守を促すメールを送信することも要請したとのことです。
以下のように、門川市長は違法民泊に対して許可の取得を促すよう指導を強めるとしています。
門川市長は会見で「おもてなしは安全安心が大前提だ。訪れている人が増えているからといって、最低限の基準を守らないことはありえない」と述べ、違法な民泊施設については許可を取得するよう指導を強めていく考えを示した。
Airbnb社側は新聞社の取材に対して以下のように回答しています。
「物件を掲載する手続きの一環として、ホストの方全員に対して、関係法令を守るようお願いをしている」
「ホストの多くの方から、現行の法制度は不明瞭で分かりにくいとの話をよく耳にする。公平かつわかりやすい、新しいルールを整備するよう日本政府と協働しており、京都市とも真摯(しんし)に協議を重ねていく」
まとめ
いかがでしたでしょうか。
今回の京都市の調査はかなり丁寧に調査された結果だと思います。
無許可民泊の数が最低でも7割弱あるという結果は想定されましたが、ゴミ出しや騒音などの具体的な迷惑行為があるという声が多くなかったというのは意外な結果でした。
「連棟や路地奥にある施設における騒音」というのは京都ならではの問題かもしれませんが、宿泊客のいびきで眠れないというのは当事者にとっては厳しい話ですね。
その他、オートロックの問題や苦情窓口が無いといった今まで懸念されていた通りの問題もあることが判りました。
今回ご紹介した結果以外にも、興味深い調査結果を公開されていますので、ご興味のある方は是非目を通される事をお勧めします。
※2018年に施行された住宅宿泊事業法により、旅館業法の許可がなくても、民泊ビジネスが可能になりました。