キャッシュフロー

不動産投資をされている方はもちろん、サラリーマンの方も「キャッシュフロー」という言葉は聞かれたことがある方は多いと思います。

「手持ちで使える現金のことでしょ。そんなこと知ってるよ」と言われる方も多いのですが、実は意外と深くは知らないという方も多いように思います。

不動産を購入して民泊を始める場合、運営する上で絶対に知っておかなければいけない考え方なので、このページでは「キャッシュフロー」という概念を判りやすくご説明したいと思います。

 

キャッシュフローって、一体何?

キャッシュフローとはキャッシュフローとは、キャッシュ・イン(現金の流入)とキャッシュ・アウト(現金の流出)のことで、現金がどれだけ出て、どれだけ入ってきて、実際にどれだけの現金が手元にあるのかを表したものです。

例えば、1億円を借り入れ(利息無し)して不動産を購入した場合、10年で返済するとすると毎月の返済金額は1000万円になりますよね。その購入した不動産の家賃収入が1000万円で税金が110万円とした場合、家賃1000万円の現金が入って来て、元金返済1000万円と税金110万円の現金が出て行きますから、キャッシュフローは▲110万円になります。つまり、どこかから110万円の現金を調達しないと足りなくなってしまうということになります。

「そんな当たり前の事計算して、何の役に立つの?」と思われるかもしれませんが、これが非常に重要な考え方なのです。

これから、このキャッシュフローの重要性をご説明したいと思います。

 

「利益は意見、キャッシュは事実」

「会計とか難しい話は嫌いだから、簡単に済ませてね」という方は、まずこれだけは覚えておいて下さい。

 

「収支」と「利益」は違います!

この「収支」と「利益」の違いを端的に表わした言葉で、「利益は意見、キャッシュは事実」という言葉があります。

「収支」というのは現金の出入りの差を表わしたもので、「収支=収入(現金受取)-支出(現金支払)」で計算されます。これがキャッシュフローの考え方です。

入った現金と出た現金の差額。非常にシンプルですよね。手元にお金があるという「事実」です。

「利益」というのは取引をベースに計算されたもので「利益=収益(売掛金など将来受け取る予定の現金含む)-費用(未払い金など将来支払う予定の現金含む)」で計算されます。後述しますが、減価償却などは決められた年数に分けて費用として計算されます。これは会社の決算などの会計の考え方です。

「これくらいのお金の出入りがある予定で最終的にはこれくらいのお金になる予定です」という「意見」です。

会社の「損益計算書」は「利益」を計算しているので、売掛金などの未回収金も利益の中に含まれています。ですから、実際に手持ちにある現金と利益を比較すると大きな差が出る場合があります。

いくら利益が出ていても、実際に今この時点で現金が無ければ、今日返済期限の借金を返すことは出来ませんから、大変なことになりますよね。ですから、利益(意見)だけではなく、収支(事実)もしっかり把握しておかなければいけないのです。

実は、更に法人になるとこの「利益」に対して、法人税法という法律のルールに則って「益金」「損金」という計算をして「所得」を出します。法人の税金はこの「所得」に対して課せられます。利益に対しての損益という概念はここでは詳しく説明するのは割愛しますが、法人は「所得」に税金がかかるという点を覚えておいて下さい。

余談ですが、私は行政書士として記帳のお仕事もさせて頂いています。個人事業主の方が法人成りした時によくご質問を頂くのが、まさに今回の「利益」と「所得」に関するところなのです。この「収支」「利益」「所得」の3つ概念は、慣れないとなかなか判り難いと思います。

私の行政書士事務所の運営しているサイトの『法人成りした個人事業主が「え?何これ!」と感じる法人経理の難しいポイント』という記事でも、「利益」と「所得」に関してご説明しておりますので、今後法人化をご検討される方はご参照頂けましたら幸いです。

 

不動産投資のキャッシュフローの計算方法

それでは、不動産投資をする際に、どのようにキャッシュフローを計算するのでしょうか。

一般的にキャッシュフローは以下の式で計算されます。

キャッシュフロー=「税引き後利益」-「元金返済」+「減価償却費」

私は最初にこの式を見た時、「え?なんでキャッシュに減価償却費がプラスされるの?」と、ちょっと混乱しました。

「素人だもの。まさを」

で、急いで知り合いの税理士さんにメールして聞いたところ以下のような表を送って頂きました。

この表を見て、「あ~!なるほど!さすがプロだなあ」と感心しました。

キャッシュフローとは

最初、私の頭の中で「現金収入-元金返済+減価償却」と勘違いしていたので、「なんで何もないところから減価償却分のお金が入ってくるの?」と思ってしまったのが原因でした。

「現金収入」ではなく「税引後利益」から計算するという点がポイントですね。

このキャッシュフローの計算式は「税引後利益」から「手持ち現金」に変換するための計算式と考えた方が、私的にはすっきりします。

判り難い方は、上の表②の一番下の段の「税引後」という欄に注目して下さい。1年目から15年目まで税引後利益は390万円で一定ですね。これは会計のルールに則って計算された利益です。元金返済があってもなくても390万円です。

では手元の現金も一定かというと、①を見ると1年目から10年目までが▲110万円とキャッシュが足りなくなっているのに、11年目からは突然890万円現金が手元に残るようになっていますよね。これは実際の手元にある(又は不足している)現金です。

1年目から10年目までは1000万円家賃収入があっても、借金の返済に毎年1000万円と税金110万円を支払わなければならないので110万円の現金が不足になります。

11年目以降は借金を完済して返済金がなくなったので、家賃収入の1000万円から税金を支払って890万円の現金が手元に残ります。

①と②では全然違う数字になっていますよね。

上の表②「税引後利益」から表①「キャッシュフロー」を見る為の計算式が『税引き後利益」-「元金返済」+「減価償却費」』ということになります。

1年目でみると

390万(税引後利益)-1000万(元金返済)+500万(減価償却費)=①の▲110万円

11年目でみると

390万(税引後利益)-0万(元金返済)+500万(減価償却費)=①の890万円

となります。

 

何故、キャッシュフローが重要なの?

キャッシュフローの重要性今まで見てきましたように、利益が出ていても、手元に現金があるとは限りません。

表①の1年目から10年目は毎年110万円の不足があるということは、どこかから現金を調達しなければいけないということになります。もし副業で不動産投資をしていて、キャッシュフローがマイナスになった場合は、本業の収入を副業の運営のためにまわさなければいけないという事態になってしまいます。

ですから、キャッシュフローがマイナスにならないように借入金の返済期間、頭金、家賃設定などを決める必要があります。

ではキャッシュフローがプラスになると、どうなるのでしょうか。

いろいろなメリットがありますが、もっとも大きいメリットは次の物件への投資にまわせる事ではないでしょうか。所有する物件を増やすことで、次の物件もキャッシュを生み出し、さらにキャッシュフローを良くすることも可能です。

キャッシュフローを良くするには、現金の流入を増やす現金の流出を減らすかのどちらかです。

借入金の返済期間を長くすれば月々の返済金額は小さくなるので、キャッシュフローは良くなりますが、金利が高めの設定になる点や長期的に金利が上がる可能性もあるので、必ずしも長く設定する方が良いとは限りません。いろいろな条件を考慮しながら決める必要があります。

また、家賃収入はキャッシュフローを良くする最も重要な要素ですが、もし空室が出るようなことになれば、一気にキャッシュフローが悪化します。空室が出た場合は広告費などの出費が予想されるので、さらにキャッシュフローは悪くなることも考えられます。

そういった様々な角度からメリットとリスクを考えて、物件の購入を決められるのが良いかと思います。

 

まとめ

まとめいかがでしたでしょうか。

途中の会計の話は少し判り難かったかもしれませんが、会計上の利益が出ていても、手元に現金が無いということがありえる、ということはご理解頂けたことと思います。

「キャッシュフローとは入ったお金と出たお金の差額」と言ってしまえばそれまでなのですが、キャッシュフローを甘く見ると大怪我をしてしまう可能性もあります。

金利、借入期間、頭金などに加えて空室リスクなど、出来るだけ沢山の角度から判断して、キャッシュフローが良い物件購入をされることが重要だと思います。