旅館業登録の申請窓口は保健所になりますが、いきなり保健所に申請書を出しても受け付けてもらう事が出来ません。
そもそも申請することが可能なのかを確認し、その後申請に際しての設備などの登録要件を満たしているかをいろいろな役所へ確認をした上で、最後に申請をすることになります。
旅館業登録は基本的には各自治体の条例に細かい規則が決められているので、実際に申請を出される際には登録する土地の条例に従って設備の準備などを行って下さい。
ここでは、一般的な流れをご紹介したいと思います。
以下に書きます部署名は、各自治体によって名称は異なります。
以下一般的によく使われている名称での窓口部署をご説明していますので、実際には各自治体の窓口でご確認下さい。
「用途関係」の確認
旅館業登録をする前に、旅館業を営業することが認められている構造の建物か、また営業が認められている土地にあるかを調べる必要があります。
ここで要件を満たしていなければ申請は出来ませんので、必ず申請前に確認をするようにして下さい。
建築指導課での確認
建築基準課では建築基準法に基づく確認、許可、認可、指定、承認及び届出等に関することや建築物の防災及び耐震に関することを行っています。
旅館業登録をする物件が、建築基準法及びその地域の条例の要件を満たしていて、申請が可能かを確認します。
ここで、旅館業として登録申請が出来ない物件であると判った場合は申請が出来ません。
開発審査課での確認
開発審査課では都市計画法の開発許可、都市計画施設の区域内において建築物の建築をする場合の都市計画法に基づく建築許可などを行っています。
旅館業登録をする物件が、都市計画法及びその地域の条例の要件を満たしていて、申請が可能かを確認します。
ここで、旅館業として登録申請が出来ない物件であると判った場合は申請が出来ません。
(建築基準法の用途変更に関しては『用途変更とは』で詳しくご説明しています。)
「環境保全関係」の確認
風俗営業法で規制対象になっているラブホテルを、最初に旅館業登録をして、許可が出た後に実質上ラブホテルにする「偽装ラブホテル」が2000年以降問題になっています。
そういった偽装ラブホテルを規制するために解決するために、風俗営業や店舗型性風俗特殊営業の用途に供する建築物の建築等の規制に関する条例を出している自治体があります。
旅館業登録をする場合は、こういった環境保全関連の部署にも確認が必要です。
「消防関係」の確認
民泊を始めるためには、住宅宿泊事業法の届出や旅館業法に基づく営業許可を取得するだけではなく、消防法令に基づく基準に適合させて防火安全対策を確保する必要があります。
消防局予防課での確認
旅館業をはじめるには、消防法令に適合していることを証明する「消防法令適合通知書」が必要になります。
消防設備に関しては各自治体で細かい条件が異なりますので、物件の管轄の消防局へ問い合わせてから、旅館業登録申請の準備をします。
(民泊に必要な消防設備に関しましては『民泊に必要な消防設備』でも詳しくご説明しています。)
「排水関係」の確認
下水浄化センターでの確認
旅館業の用に供する厨房施設等から排出される汚水によっては、下水管を侵したり、処理場の機能を妨げたりする場合があります。
平成24年に水質汚濁防止法が改正され、年 1 回以上、旅館等からの排出水(公共用水域(河川や湖等)に排出する水)について、必要な項目の水質検査を行ない、その記録の保存が義務付けられました。
国の法律以外でも、独自の条例で悪質汚水を一定の基準まで処理して排水するように義務づけている自治体もあります。
こういった自治体の規制に関しても事前に確認しておく必要があります。
「景観関係」の確認
都市計画課での確認
京都の景観条例は厳しい規制で有名ですが、景観条例や経験影響評価制度などの関連した条例を制定している自治体は京都以外にもたくさんあります。
景観に関する条例は、各自治体で非常に細かく地域を指定している場合もありますので、特に注意が必要です。
例えば兵庫県では以下のように決められています。
兵庫県の「景観の形成等に関する条例」(以下、景観条例)に基づき、地域特有の自然環境や都市環境との調和が特に求められる下記の建築物等については、届出に先立って、景観影響評価手続が必要です。
景観影響評価制度の対象建築物等と対象行為
対象建築物等(特定建築物等)
以下の建築物等は、特定建築物等に該当し、景観影響評価制度の対象となります。
なお、以下の建築物等に該当しない場合、つまり特定建築物等に該当しない場合は、景観影響評価制度の手続は必要ありませんが、景観形成地区や広域景観形成地域内にある場合や、一定規模以上の大規模建築物等に該当する場合は、別途、景観条例に基づく届出が必要です。
(1) ホテル・旅館
ア 対象
旅館業法第2条第1項に規定するホテル営業又は旅館営業の用に供する建築
物等で、延べ面積が 500 ㎡以上又は客室数が 10 室以上のものイ 適用除外
風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律施行条例第2条第4号に規定する第4種地域内の建築物等を除きます。第4種地域とは以下の地域です。
三宮地区:神戸市中央区のうち 加納町3丁目並びに中山手通1丁目及び2丁目のうち市道長田楠日尾町線以南の地域 加納町4丁目 下山手通1丁目及び2丁目 北長狭通1丁目及び2丁目
福原地区:神戸市兵庫区のうち 福原町 西上橘通1丁目及び2丁目 西橘通1丁目及び2丁目 西多聞通1丁目及び2丁目
神田新道地区:尼崎市のうち 昭和通4丁目及び5丁目 昭和南通4丁目及び5丁目 神田北通2丁目から4丁目まで 神田中通2丁目から4丁目まで 神田南通1丁目魚町地区:姫路市のうち 坂元町 本町のうち国道2号以南及び市道城南 29号線以西の地域 福中町 西二階町のうち市道城南 29 号線以西の区域 魚町 立町 塩町 十二所前町のうち市道幹線第8号以北の区域
このように、条例では非常に細かく規定がされていますので、各自治体の窓内で必ず事前確認が必要です。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
「旅館業法を申請する前に、こんなにたくさん確認しなければいけないのか!」と驚かれた方もいらっしゃるのではないでしょうか。
旅館業法という法律自体は旅館業の大まかなルール決めをしていて、実際には各自治体の条例に従って運営しなければいけないのです。
ですから、地域毎の条例や関連窓口を訪れて丁寧に確認することが重要になります。
民泊を始めようとして物件を購入した後に「ここでは旅館業登録は出来ません」となってしまえば大変なことになります。
事前確認は必ず行うようにして下さい。