2016年4月1日の旅館業法の緩和に向けて各自治体が、時期尚早として条例で民泊営業に関しての条件を定める動きがありました。
3月29日に東京都の台東区でも民泊営業に関して独自の条件を付ける東京都台東区旅館業法施行条例改正案が可決されました。(2018年6月15日改正施行)
(軽井沢町の動きに関しては『軽井沢町の町内全域「民泊禁止」方針発表』をご参照下さい。)
2016年4月からの旅館業法施行令の緩和
旅館業法施行令の緩和で客室面積の制限を引き下げられる以外に、フロントの設置義務も一部免除されることになります。
客室面積の制限とフロント設置という条件のためにワンルームマンションを使った民泊のほとんどが許可がとれず、違法状態となっていました。
今回の緩和でワンルームマンションでも民泊可能な物件が出てくるのですが、現時点でゴミ出しや騒音で近隣住民とのトラブルが多発している中で、ワンルームマンションの民泊営業を認めるのは時期尚早という考えの自治体も増えています。
台東区の条例改正内容
年間約4500万人の観光客が訪れる台東区で民泊営業に関して以下のような条件を付ける東京都台東区旅館業法施行条例改正案が可決されました。
条例施行期日は平成28年4月1日となっています。(2018年6月15日改正施行)
営業者の遵守事項(条例第6条第1項第4号)
営業施設には、適正な運営を行うため、営業時間中に営業従事者を常駐させること。
これは鍵だけ渡して後は勝手にして下さいという旅館・ホテル営業は出来ないということになります。
ワンルームマンションで宿泊者と一緒に営業従事者が過ごすわけにはいきませんので、事実上ワンルームマンションでの旅館・ホテル営業は難しい条件になりますが、住宅宿泊事業法による民泊営業は可能です。
簡易宿所営業の施設の構造設備の基準(条例第9条第1項第5号)
宿泊しようとする者との面接に適する玄関帳場その他これに類する設備を有すること。
玄関帳場というのは、いわゆる「フロント」のことです。
これもワンルームマンションに設置するのは難しいので、ワンルームマンションで簡易宿所営業は難しいということになります。
※住宅宿泊事業法による民泊営業は可能です。
台東区以外の条例
東京23区で今回のような動きをしたのが台東区だけかといいますと、そうでもないのです。
千代田区は台東区と同じように「フロント設置(千代田区旅館業法施行条例9条(1))」と「営業従事者の常駐(千代田区旅館業法施行条例5条(6))」といった条件を条例にいれています。(千代田区旅館業法施行条例)
フロント設置については、23区中9つの区が条例に条件として入れています。
つまり台東区だけが厳しくしたわけではないのです。
今まで台東区の条例には「フロント設置」と「営業従事者の常駐」という条件が無かったので、旅館業法施行令が緩和されるとワンルームマンションの営業が出来るようになってしまう可能性があります。
そこで、フロント設置と営業従事者の常駐を条件に入れて、民泊を安心安全に運用できるような準備期間を確保したのだと思います。
まとめ
改正案を提案した区議からは「民泊そのものに反対ではない。だれもが安心して訪れることができる区にするためだ」という説明があります。
この言葉にもありますように、「民泊自体を絶対反対!」という方は少ないのではないかと思います。
ただ、ゴミ出しや騒音といった近隣住民とのトラブルや治安の問題、衛生の問題をどのようにクリアするかを担保する前に、宿泊施設の緩和だけがドンドン進んでしまうことに反対しているのだと思います。
生活環境や治安・衛生面で悪化が出れば、最終的に「民泊ビジネスは悪」というイメージにもなりかねません。
宿泊施設だけ規制を緩和するのではなく、生活環境や治安・衛生面への新たな規制をつくるなどのバランスを取りながら、民泊の法改正を進めていくのが良いのではないかと思います。