不動産取得税

民泊ビジネスをはじめるにあたって、不動産の購入や、今持っている家の増改築をご検討される場合もあると思います。

そういった場合には「不動産取得税」という税金を払わなければいけません。

「不動産取得税」とは、読んで字のごとく「不動産を取得した時にかかる税金」です。

が、単に「不動産を取得する」と言っても、実は結構奥が深いのです。

私も調べて行くなかで、「税金一つとってもこんなに奥が深いのか」と感じました。

ここでは、「不動産取得税」が「どのような場合に」「いつ」「どのように」課税され、又、「どのような例外」があるのかを見て行きたいと思います。

不動産取得税とは

「不動産取得税」という税は、その不動産の所在する都道府県が不動産を取得した人に対して課す税金です。

例えば、大阪府内の土地を購入した場合は、大阪府に納税します。

そして、不動産取得税は不動産を取得した時に一度だけ納めるものなので、固定資産税のように毎年納税する必要はありません。

不動産の取得とは

「不動産取得税」は「不動産の所有権を取得した時」に課せられるのですが、そもそも「不動産の所有権の取得」とはどういったことを指すのでしょうか。

土地や家を購入するのは、まさに「不動産の所有権の取得」の代表的なものですが、それ以外にも不動産の所有権を取得するケースはあります。

贈与などの場合も「承継取得」といって不動産の取得となるのですが、投資の場合は贈与のようなケースは少ないと思いますので、不動産投資を始めようとされている方は「原始取得」というものを覚えておくとよいと思います。(※売買も贈与と同じく「承継取得」になり不動産取得税の対象となります)

原始取得って、何?

原始取得とは

原始取得とは、不動産の存在しなかった場所に新たに不動産を設けることです。この原始取得も不動産取得税の課税対象になります。

原始取得とは、つまり、「無から有を生み出すこと!」

というと、大袈裟なのですが、例えば、家屋の「新築」や「増築」などは原始取得になります。

新築というのは何も無い土地に家を建てるようなケースですね。

増築というのは、平屋を2階建にしたり、敷地内に建物を新たに建てたり、床面積を増やすようなケースを指します。

投資用に買った土地に建物を建てたり、中古の平屋を買って2階建にしたりした場合も不動産取得税が課せられます

また、「新築」「増築」と似た「改築」も原始取得となります。

「改築」とは、古い建物を壊して、用途や規模、構造を大きく変えず新しい建物を建てる場合を指します。

例えば、中古の一戸建ての家を買って、それを取り壊して再度一戸建てを立て替える場合は「改築」になります。

そう聞くと「改築」と「新築」と似ているようにも思えますが、「新築」は建物の無い土地に新たに建物を建てたり、一戸建ての家を取り壊して、マンションを建てるような用途や規模、構造を大きく変える場合を指し、「改築」は一戸建てを取り壊して同じくらいの規模の一戸建てを立て直すことを指します。

このように、単に不動産を購入した場合以外にも、その購入した不動産に新築、増築、改築などをする場合も不動産取得税が課税されますので、注意が必要です。

不動産取得税の計算方法

税額は、基本的には「課税される対象の金額×税率」で計算されます。

え?買った価格に課税されるんじゃないの?

不動産取得税の対象

「3000万円で購入した投資用のマンションの不動産取得税って、何パーセントくらいかかるのかな?」と思われる方も多いと思いますが、実は、不動産取得税は購入価格に課せられるのではないのです。

「え?じゃあ、何の金額にかかるの?」と思われると思います。

税額を算出する上で基礎となる価格を「課税標準」と言いますが、不動産取得税の課税標準は購入価格ではなく、「固定資産税課税台帳登録価格」になります。

「固定資産課税台帳登録価格」とは、総務大臣が定めた固定資産評価基準に基づいて評価された額を都道府県知事又は市町村長が決定した価格で、この価格に対して課税されます。(「固定資産税課税台帳価格」が無い不動産は都道府県知事の決定によります。以下、両方をあわせて「固定資産税評価額」といいます。)

ということは、購入価格が3000万円であっても、固定資産税評価額が4000万円であれば、4000万円に対しての不動産取得税を支払わなければなりません。「え~っ!」って感じですよね。でもその逆もありますから、購入価格に対して課税されるよりも少ない税額ですむ可能性もあります。

ということは、投資物件の固定資産税評価額がいくらなのかは知っておく必要があると思います。

不動産取得税って、どれくらい払うの?

税額は、原則として「標準課税×税率」で計算されます。

不動産取得税の標準課税は先程書きました通り「固定資産税評価額」となります。

不動産取得税の税率は4%なのですが、住宅用の土地を取得し一定の要件の下で特例が設けられているので、以下の「不動産取得税の特例って何?」の税率をご参考下さい。

不動産取得税の特例って、何?

不動産取得税には、いろいろな条件の下で税率の軽減の特例があります。

控除額の条件など細かく説明すると判り難くなりますので、ここでは、おおまかな計算の説明に留めています。実際に具体的な案件がある場合には、税理士さんにご相談されることをお勧めします。

まずは「不動産取得税が安くなる場合があるんだ」ということを覚えておいて頂ければと思います。

ちなみに、店舗や事務所などの住宅以外の家屋には特例はありませんので、「固定資産税評価額×0.04」で計算して下さい。

近年では、地域のケア付き住まいや認証保育所等に対して、不動産取得税の減税措置があります。(2023年11月30日現在)

自分の住宅用ではなく、旅館業登録をして民泊として貸し出す投資用物件には特例は適用されませんのでご注意下さい。

税額=課税標準額×税率 ですから、以下の3つのどれでも税額は低くなることになります。

  • 税額を低くする。
  • 課税標準額を低くする。
  • 税率を低くする。

特例ではこの3つのどれかを低くすることで税額が低くなるようになっています。

土地及び住宅の特例(税率)

宅地に限らず全ての土地の税率が1%軽減されます。家屋の場合は、住宅のみ1%の軽減が適用されます。(店舗や事務所などの建物の取得は対象外です。)

標準税率4%→3%

※この特例は令和6年30年3月31日までの適用となります。

宅地の特例(課税標準額)

宅地の場合は税額を計算する基になる「課税標準額」を低くして、税額を低くする特例があります。

宅地とは住宅地、商業地、工業地のように建物を建てるための土地です。農地のように建物を建てない土地は宅地には該当しません。

宅地の課税標準額 = 固定資産税評価額 × 1/2

※この特例は令和6年3月31日までの適用となります。

新築住宅の特例(課税標準額+税率)

自分で居住する場合以外に、投資用としての住宅用賃貸用マンション(戸建は対象外)の購入や増改築にも適用されます(マンションは課税床面積が50㎡以上といった条件があります。)

不動産取得税 = (固定資産税評価額 - 1,200万円) × 3%

※3%は2024年3月31日までの特例措置です。

中古住宅の特例

中古は、一定の要件をすべて満たす中古住宅の場合に、新築された日に応じた額が住宅の価格から控除されます。

税理士さんか都道府県税事務所にご相談下さい。

申請しないと軽減されない?軽減措置申請方法

不動産取得税の特例を適用してもらうには「不動産取得税課税標準の特例適用申告書」というのものを、不動産を取得した日から10日から60日以内に都道府県税事務所に提出しなければなりません。

都道府県によって申告期限が異なりますので、注意が必要です。

この書類は基本的には自分で申請しなければならないのですが、都道府県税事務所が登記時に提出された書類等から判断して軽減措置の処理してくれている場合もあるそうです。

ただ、もし処理されていないと、せっかくの特例を受けられずに不要な出費になってしまいますので、必ず確認されることをお勧めします。

まとめ

まとめ

いかがでしたでしょうか。

不動産取得税は、新築か、中古か、宅地か、居住用か等の条件で受けられる特例が変わってきますので、十分に注意が必要です。

例えば新築の固定資産税評価額が4000万円の賃貸住宅用マンションを購入した場合、特例を申請しない場合は120万円ですが、特例を申請すれば84万円になります。

かなり大きいですよね。

投資用の場合は特例は適用されないものもありますが、どれが適用されるのかをきちんと押さえて、節約できるところを徹底して節約することが大事なのではないかと思います。

※この記事はあくまで一般論ですので、個々の案件に関しては税理士さんや都道府県税事務所などの専門家に相談して下さい。