民泊の税務調査で指摘!?「社長!その『外注費』は『給与』です!」

[記事公開日]2016/05/03
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外注費と給与の違い

民泊ビジネスを始めたAさん。

民泊ビジネスが軌道にのって売上も伸びてきたので、節税対策のためにも会社を作ることにしました。

それまでは、民泊の集客は自分で行い、宿泊のお客さんの対応や集金、部屋の掃除などはサラリーマン時代から親しくしていた友人Bさんへ委託していました。

法人を設立しても「人を雇うのはいろいろ面倒なこともあるから、民泊の管理運営は今まで通りBさんに全部外注に出すスタイルでいこう!」ということにしました。

設立後3年目に初めての税務調査。

いろいろ細かい質問をされて、仕事内容を説明したところ、税務調査官から思いもかけない指摘が・・・。

「この人への支払いは『外注費』ではなく、『給与』ですよ。」

「え?雇っても無いのに、なんで給与になるんですか?」

実は、「外注費」と「給与」というのは税務調査でもよく問題になるので、税務調査官もその点は特に注意してチェックをする傾向にあります。

そもそも、「外注費」と「給与」はどう違うのでしょうか?

今回はこの「外注費」と「給与」に関して判りやすくご説明したいと思います。

 

なぜ雇っていない人に払うお金が「給与」なの?

「給与」というと「社員に毎月支払う報酬」、と思う方も多いと思いますが、必ずしも社員に限定されたものではないのです。

以下のような場合は、自分の会社の社員として雇っていなくても「給与」とみなされる可能性があります。

 

他人が代替して業務を行える

上の例の場合、Aさんが仕事を出しているBさんが、Aさんの承諾無く孫請けに出したり、別の人スタッフにさせたり出来る場合は外注費となります。

外注費は「請負契約に基づいて受ける役務提供の対価」と定義されています。

請負契約というのは、「お金をもらって結果を提供する契約」ということなので、誰がどのようにするかは問題になりません。

例えば、「Bさんの人柄に惚れて仕事を出したんだから、Bさん以外の人は接客や掃除をさせないようにして下さい」となると、雇用という判断をされる可能性があります。

また、仕事を請け負ったBさんが高熱を出して仕事ができなくなり、Aさんが他の作業員Cさんを探して、Bさんが寝込んでいる期間だけ働かせたとします。

その期間の報酬分をBさんの報酬から減額して、その分を代理で働いたCさんに支払うようなケースも「給与」とみなされる可能性があります。

 

外注先が請求書を発行してない

「外注費」とする場合、Bさん自らが請負金額を計算し、Aさんに請求書を発行しなければなりません。

Bさんが請求書を出さずに、Aさんが時給換算で計算して報酬を支払うような場合は「給与」とみなされる可能性があります。

 

発注者の時間的拘束を受けている

AさんがBさんに対して作業時間を拘束しているような場合は、雇用関係にあり「給与」とみなされる可能性があります。

前述しましたように、請負契約というのは、「仕事の完成の対価として報酬をもらう契約」ですので、いつ、誰が、どのような手順で、どのような時間配分で仕事をするのかは、仕事を受注したBさんが自由に決められるのです。

「作業時間は9時から17時までお願いします」というような指示を出している場合は、時間の拘束をしているので雇用契約(給与)とみなされる可能性があります。

ちなみに、アルバイトのような日給や時給で報酬を決める形態も「雇用契約」となり、「給与」となります。

 

不可抗力で完成品が滅失した場合に報酬の請求ができる

民泊施設を建てて販売するような場合も注意が必要です。

一人親方のDさんにいつも建設の仕事を依頼していたとします。

ある日、建築物を建てている途中で大型台風が来て、損壊してしまいました。

「3週間もかけて仕事をしたんだから、その分は報酬を下さいよ」と建設をお願いした一人親方のDさんに請求されて、「そうだなあ、そこは面倒みないとねえ」と言って報酬を支払った場合は「給与」とみなされる可能性があります。

請負契約は「2000万円で2ヶ月以内に家を建てる」といった「完成品の納品=報酬の受取」の契約ですから、完成品を納品していない場合は報酬の請求が出来ないのです。

 

材料又は用具等を発注者が提供している

先程の建設に関してもう1点。

例えば、釘や電動工具のような軽微な道具は別として、手持ち大工道具以外の建設に必要な用具を発注者が支給している場合、雇用契約(給与)とみなされる可能性がありますので、注意が必要です。

 

「外注費」と「給与」はどう違うの?

外注費と給与の違い今まで見てきたように「外注費」と「給与」を分ける為に、これだけ細かく基準が設定されているのは理由があります。

事業主にとって「給与」よりも「外注費」の方がメリットがあるから、税務署も厳しくチェックをするのです。

それでは、「外注費」になった場合にどのようなメリットがあるのかを見ていきたいと思います。

(※外注費の方にメリットがあるといっても、給与にあたる契約を外注費とすることはできません)

 

「外注費」と「給与」の違い1 消費税

給与も外注費も同じ経費ですが、給与は消費税が非課税なのに対して、外注費は消費税が課税です。

外注費はガソリンを買ったり、車を買うのと一緒で、消費税を払う必要があります。

これがなぜ「外注費」の方がお得になるのかと言うと、外注費の消費税は支払った消費税の一つですので、消費税を計算するときに控除対象消費税として差し引くことができます。

例えば(計算しやすいように)108万円を給与として支払った場合は支払った消費税はゼロですが、外注費の場合は8万円の消費税を支払っていることになります。

消費税は預かった消費税と支払った消費税の差額を納税しますので、108万円が外注費となった場合は、8万円の消費税を支払っていることになりますので、納税する消費税額が8万円少なくなることになります。

 

「外注費」と「給与」の違い2 源泉所得税の管理

給与を支払う場合には「必ず」天引きする源泉所得税を管理する必要があります。

外注費の場合は源泉徴収しなければいけない仕事内容が限られているので管理は比較的楽になります。

外注費であっても源泉徴収しなければならないケースは以下の通りです。(非常に限定されたケースのみです)

(1) 報酬・料金等の支払を受ける者が個人の場合の源泉徴収の対象となる範囲

イ 原稿料や講演料など
ただし、懸賞応募作品の入選者などへの支払については、一人に対して1回に支払う金額が5万円以下であれば、源泉徴収をしなくてもよいことになっています。
ロ 弁護士、公認会計士、司法書士等の特定の資格を持つ人などに支払う報酬・料金
ハ 社会保険診療報酬支払基金が支払う診療報酬
ニ プロ野球選手、プロサッカーの選手、プロテニスの選手、モデルや外交員などに支払う報酬・料金
ホ 芸能人や芸能プロダクションを営む個人に支払う報酬・料金
ヘ ホテル、旅館などで行われる宴会等において、客に対して接待等を行うことを業務とするいわゆるバンケットホステス・コンパニオンやバー、キャバレーなどに勤めるホステスなどに支払う報酬・料金
ト プロ野球選手の契約金など、役務の提供を約することにより一時に支払う契約金
チ 広告宣伝のための賞金や馬主に支払う競馬の賞金

(2) 報酬・料金等の支払を受ける者が法人の場合の源泉徴収の対象となる範囲

・馬主である法人に支払う競馬の賞金

 

「外注費」と「給与」の違い3 社会保険料の負担

法人の場合、厚生年金などの社会保険の加入が義務付けられています。

保険料は事業主(会社)と被保険者(社員)が折半することになります。

ですから、外注ではなく雇用(社員)となった場合は、社会保険料の半分の負担をしなければいけないということになります。

 

「外注費」と「給与」の判断基準

「外注費」か「給与」かは税務上、契約内容(形式)と具体的な仕事内容(実態)の両方によって判断されます。

後述しますように、税務調査で「外注費」ではなく「給与」と指摘を受けた場合は、追徴とペナルティが課せられますので、「外注費」とする場合は本当に「外注費」になる契約なのかをしっかり見極めて申告する必要があります。

 

「外注費」と認められなかった場合のペナルティは?

外注費として否認された場合は給与扱いになります。

 

消費税の追徴

消費税の追徴支払っていたとされていた消費税がなくなりますので、その分の消費税がアップします。

例えば毎月20万円/年間240万円の外注費が否認された場合

240万円×8%=19.2万円の消費税追徴

 

源泉所得税の追徴

本来給与であればかかる源泉所得税が追徴されます。

20万円の源泉所得税=20,900円×12=約25万円の源泉所得税追徴

 

延滞税・加算税

消費税と源泉所得税の追徴に加えて、延滞税や加算税が課せられる可能性があります。

 

まとめ

まとめいかがでしたでしょうか。

あなたが支払っている外注費は、給与ではなく外注費として計上出来るものなのかを十分注意する必要があることをご理解頂けたと思います。

年間240万円の外注費でも給与と指摘された場合、約44万円もの追徴税額がかかってくることになります。

年間600万円になると追徴額は消費税と源泉所得税だけでも200万円を超します。

払う予定をしていなかった200万円が税金として納めなければいけないと言われても、すぐに現金が用意出来ないということもありますよね。

「外注費にしておいた方が税金も少なくていいや」と軽い気持ちで外注費に計上して、税務調査で否認された場合は、思わぬ追徴税額で最悪の場合は会社の経営に影響を与える可能性もあります。

「外注費」に計上する場合は、契約内容と業務内容の両方を勘案して判断しなければなりません。

できれば近くの専門家に相談されるのが良いかと思います。

 

 

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行政書士・宅建士 横関雅彦
民泊申請専門行政書士・民泊運営コンサルタント。旅館業許可申請などの民泊ビジネスの申請サポート及び運営コンサルタントを行う。宅地建物取引士の資格も持ち、不動産売買の面でも民泊ビジネスをサポート。 また、総合旅行業務取扱管理者の資格も持ち、将来的に旅行業と民泊をつなぐサポートも展開したいと考えている。