特区民泊とは

2016年1月に東京都大田区、4月に大阪府で「国家戦略特区」として民泊条例を施行された際に、「民泊解禁!」といった記事がインターネットにあふれました。

しかし、ふたを開けると、東京都大田区での認定件数が2016年8月23日時点で23施設(東京都大田区特区民泊認定施設一覧)、大阪府の認定件数は2016年8月24日時点で3施設(大阪府特区民泊認定施設一覧)という状況でした。

何故、特区民泊の制度がほとんど活用されていなかったかと言いますと、滞在期間が6泊7日以上という条件があったからなのです。

2016年9月9日の国家戦略特区諮問会議で、この6泊7日以上という滞在期間の条件が2泊3日に緩和されることが決まりました。

その後2016年10月25日に特区民泊の滞在要件を2泊3日以上に緩和する政令改定が閣議決定されました。

これを受けて大阪府の松井知事と大阪市の吉村市長は年内に条例を改定して、2017年1月から特区民泊で2泊3日の営業が出来るようにしたいという考えを示されました。

この緩和によって「特区民泊」は一気に注目を浴びることになります。

それでは、国家戦略特区のいわゆる「特区民泊」とはどういったものなのかを判りやすくご説明したいと思います。

特区民泊とは

「特区民泊」の正式名称は「国家戦略特別区域外国人滞在施設経営事業」と言います。

正式名称をみると、外国人しか宿泊出来ないという印象を持たれる方も多いと思います。

特区民泊には、日本人だけでも宿泊出来るのでしょうか。

内閣府地方創生推進事務局のホームページには以下のように注意喚起がされています。

旅館業法の特例(特区民泊)について

本特例の対象施設は、制度上、日本人でも外国人でも利用できるものですが、最近、対象施設の利用者が外国人に制限されているかのような誤解が広がっており、制度の正確な理解の確保と本制度の円滑な活用促進に支障が生じることとならないか懸念しております。

国家戦略特別区域法第13条は、外国人旅客の滞在に適した「施設」を一定期間以上使用させる事業と規定しており、事業で用いる「施設」が外国人旅客の滞在に適したものであることを求めているものの、施設の「利用者」については何ら規定を設けておりません。

特区民泊の施設は「外国人旅客の滞在に適した施設」であって、それを利用する人は外国人でも日本人でも構わないということになります。

つまり、特区民泊は外国人に限定されず、日本人でも宿泊出来ます。

(※以下、「国家戦略特別区域外国人滞在施設」を「特区民泊」と呼んでご説明します。)

民泊条例とは

民泊条例とは

国会が制定する「国家戦略特別区域法」の第13条(旅館業法の特例)を補足する形で、内閣が制定する「国家戦略特別区域法施行令」の第12条(法第十三条第一項 の政令で定める要件)が規定されています。

さらに、「国家戦略特別区域法施行令」の第12条に関して、各自治体で細かくルールを規定しているのが「国家戦略特別区域外国人滞在施設経営事業に関する条例」です。

例えば、国家戦略特別区域法施行令では、以下のように、「最低の宿泊日数を3日から10日の範囲内で各自治体の事情で決めて下さい」というように、細かい運営基準は各自治体に任せています。

国家戦略特別区域法施行令第 13 条第2号

施設を使用させる期間が三日から十日までの範囲内において施設の所在地を管轄する都道府県の条例で定める期間以上であること。

国家戦略特別区域法施行令

つまり、大きな範囲は法律や政令でルールを決めて、その範囲内で各自治体が条例で、条件を厳しくしたり、ゆるくしたり規定することになります。

このように、特区民泊の認定や運営基準は、国家戦略特別区域法(法律)や国家戦略特別区域法施行令(政令)が規定する範囲内で、各自治体が条例等で決めているのです。

民泊条例に関しては『民泊条例とは』でも詳しくご説明していますので、ご参照下さい。

特区民泊の動き

国家戦略特区に指定されている地域であっても、全ての特区で民泊条例を制定出来るわけではありません。

また、民泊条例が制定できる国家戦略特区であっても、全てが民泊条例を制定しているわけではありません。

各自治体の条例等の状況については「民泊制度ポータルサイト(各自治体の窓口案内)」で確認できます。

特区民泊の動き

※2018年に施行された住宅宿泊事業法により、旅館業法の許可がなくても、民泊ビジネスが可能になり、国家戦略特区外においても民泊条例が制定されています。

大阪市の特区民泊の要件

それでは、大阪市の特区民泊の要件を見ていきたいと思います。

特区民泊に関しては、「大阪市国家戦略特別区域外国人滞在施設経営事業に関する要綱」(以下「要綱」といいます)が非常に重要ですので、よく読んでおきましょう。

こちらの大阪市のホームページもご参照下さい。

「大阪市国家戦略特別区域外国人滞在施設経営事業(特区)」

実施可能区域

大阪市の特区民泊が可能な地域は、原則として、建築基準法第48条で「ホテル・旅館の建築が可能な用途地域」と規定されている地域です。(詳しくは『民泊の始め方』をご参照下さい)

大阪市民泊可能地域

賃貸物件で民泊をおこなう場合の注意点

賃貸物件で民泊を始めようと思われる方も多いと思います。

賃貸物件の場合、「賃貸借契約書」と「マンション管理規約」の2点に注意が必要です。

賃貸借契約書に「民泊可能」と記載されている場合

賃貸借契約書に「民泊可能」と記載されている場合は、申請時に賃貸借契約書の写しを提出すれば大丈夫です。

賃貸借契約書に「民泊可能」とも「民泊不可」とも記載が無い場合

賃貸借契約書に「民泊可能」とも「民泊不可」とも記載が無い場合は、賃貸借契約書に加えて、所有者(貸主)が民泊の使用を許可する旨を明記した「使用承諾書」が必要になります。

賃貸借契約書に「民泊不可」と記載されている場合

民泊施設として認定されません。

マンション管理規約に「民泊可能」とも「民泊不可」とも記載が無い場合

標準マンション管理規約には「専ら住宅として使用」という文言が書かれています。

旅館業法の簡易宿所の許可では、これをどのように解釈するかで議論がありました。

大阪市の特区民泊では、この表現は可能とも不可とも記載されていないとみなしています。

ですから、「専ら住宅として使用」と規約に書かれている場合、管理組合から民泊としての使用承諾書をもらえれば、特区民泊の認定申請は可能となります。

逆に言いますと、管理組合から民泊としての使用承諾書がもらえなければ、その施設で特区民泊をすることは出来ません。

管理規約に「民泊不可」と明記されている場合も、特区民泊の営業は出来ません。

居室の構造設備

民泊営業開始

特区民泊の居室の構造設備に関しては、国家戦略特別区域法施行令で以下のように規定されています。

  • 一居室の床面積は、二十五平方メートル以上であること。
  • 出入口及び窓は、鍵をかけることができるものであること。
  • 出入口及び窓を除き、居室と他の居室、廊下等との境は、壁造りであること。
  • 適当な換気、採光、照明、防湿、排水、暖房及び冷房の設備を有すること。
  • 台所、浴室、便所及び洗面設備を有すること。
  • 寝具、テーブル、椅子、収納家具、調理のために必要な器具又は設備及び清掃のために必要な器具を有すること。

さらに大阪市では以下のような規定が追加されています。

  • 台所及び洗面設備は別に設け、水道水その他飲用に適する水を供給することができる流水設備を設けること
  • 調理器具は、電子レンジ、コンロなど加温できるものであること
  • 清掃器具として、掃除機、雑巾、ごみ箱を有していること

特区民泊の課題の一つとして「一部屋の床面積が25㎡以上」という要件が挙げられています。

「一部屋の床面積が25㎡以上」というのは、壁心で 25 ㎡以上であることです。(壁芯面積とは、壁や柱の厚みの中心線で測られた建物の面積のことです。)

25 ㎡というのは、国の住生活基本計画による 1 人あたりの最低居住水準として定められている数値です。

この「一部屋の床面積が25㎡以上」と規定される面積には、風呂、トイレ、台所、クローゼットを含み、ベランダは含みません。

ですから、25㎡以上+ベランダということになります。

但し、国家戦略特別区域法施行令第12条で「施設の所在地を管轄する都道府県知事が、外国人旅客の快適な滞在に支障がないと認めた場合においては、この限りでない。」という例外も認められていますが、2023年11月現在で大阪市ではこの例外は認めていません。

建築基準法に基づく検査済証について

建築基準法では完成検査を行い、建築物及びその敷地が建築基準関係規定に適合していることを認めたときは、検査済証の交付が義務付けられています(建築基準法第7条5項)。

大阪府の場合、当該物件が建築基準法に基づく検査を受けていることを確認できることが望ましいとして、申請書の添付資料として、検査済証の写しの提出をするように要請されますが、検査済証がなくても申請は可能です。

大阪市の場合、検査済証の提出は不要です。

治安保持のための対応

大阪府で特区民泊を始めるにあたっては以下のような対応を義務付けられています。

滞在者名簿の作成

滞在期間、氏名、住所、職業、国籍、旅券番号について記載した滞在者名簿を作成しなければいけません。

複数の滞在者がいる場合は、滞在者全てのパスポート確認が必要です。

日本人の場合は、免許証など写真月証明書で確認することが望ましいとされています。

これらの項目以外に、旅館業法と同様の「客室番号、到着日時、出発日時、前日の宿泊地名、行先地名、宿泊者の年齢、性別」を記載することがテロや感染症対策等で重要になるため、できる限り記載するように指導しています。

滞在者の対面について

居室の鍵の受け渡しは、直接本人確認ができる方法として、対面により行うことが最も望ましい方法としています。

「最も望ましい」ということなので、絶対に対面でなければいけないということではありません。

施設内において、滞在者や近隣住民の安全確保のため防犯カメラ等により滞在者の施設への出入り状況を確認する事や、録画された映像を一定期間保管することも効果的な方法としています。

長期滞在者には、滞在期間中の中間時には少なくとも 1 回は施設が適切に使用されているかを確認することとされています。

契約者以外の滞在の禁止

本施設に、契約者及び同居人以外の者が滞在(宿泊)した場合は、政令で定める認定要件の違反となり、認定を取り消すことがあるとされています。

これは、テロや麻薬などの犯罪行為の防止のためでもありますので、宿泊者にも必ず伝えておかなければいけない事項だといえます。

民泊施設を利用しての違法行為もありますので、運営する民泊施設が、犯罪や公序良俗に反する使われ方をされないように注意する必要があります。

使用開始時の措置

国家戦略特別区域法施行令では、「施設の使用の開始時に清潔な居室を提供すること。」という規定があります。

清潔な居室を提供するために、大阪市の民泊条例では以下のような措置を義務付けています。

  • 寝具は清潔なシーツに取り換えられていること
  • ごみがないこと
  • ねずみ族、昆虫等の発生がないこと
  • 居室内(寝室、台所、浴室、便所及び洗面設備等)の清掃がなされていること

近隣住民への対応

特区民泊の認定を申請する前に、近隣住民への説明をしなければいけません。

近隣住民とは、どこまでの距離の人で、何を説明するのかをみてみましょう。

誰に説明をするのか

以下に該当する近隣住民の方々へ、説明会の開催又は戸別訪問によって、施設が特区民泊の施設として使われることを説明しなければいけません。

要綱第5条1号

次の(ア)又は(イ)に掲げる建物(施設の存する建物の外壁から水平距離で 20 メートルを超える場合を除く。)に存する全世帯
(ア) 施設の存する敷地の境界線に接する敷地に存する建物
(イ) 施設の敷地の境界線から道路、公園等の敷地を挟んで隣接し、敷地境界線までの水平距離が 10 メートル以下である建物

つまり、境界線が接しているお隣さんと道路や公園を挟んだ10m以下のお向かいさんには説明が必要ということになります。

同意までとる必要はありませんが、対面で書類による周知が必要とされていたのですが、その後一部変更になりました。

当初は、説明会の実施や戸別訪問といった方法で周知する、つまり「近所にポスティングをして連絡しました」という方法では認められないという規則だったのですが、以下のように変更になりました。

「大阪市国家戦略特別区域外国人滞在施設経営事業に関する要綱」(案)からの変更点

以下、2016年11月28日に大阪市健康局健康推進部生活衛生課から特区民泊の説明会に参加した人へ送られたメール内容です。

(変更前)
説明会又は戸別訪問により直接説明できなかった場合は、曜日や時間を変える等により5回は訪問することを必要としていました。

(変更後)
説明会又は戸別訪問の実施方法については、次のとおりとします。

説明会:

説明会開催の案内及び本市要綱で定める説明を行わなければならない事項を記載した書面を対象となる全世帯にポスティングし、説明会を実施する。説明会不参加の住民への別途説明会は不要であるが、問合せには適切に対応する必要があります。

戸別訪問:

対象となる全世帯に戸別訪問を実施し、対面できた場合は必要事項を記載した書面を用いて説明を行う。

対面できなかった場合は、当該書面をポスティングすることにより、別途戸別訪問は不要であるが、問合せには適切に対応する必要があります。

※ ポスティングのみの周知方法は、要綱で定める「説明会又は戸別訪問」の実施には当たりません。

※ 上記、「説明会」又は「戸別訪問」実施後に施設の周辺地域の住民からの問合せ等があるかを見極めるための期間(1週間程度)を確保することが望ましい。

※ 上記、「説明会」及び「戸別訪問」を組み合わせることや、複数回上記手順を繰り返して全ての対象世帯に実施することも可能です。

※ 周辺地域の住民への周知方法及び周知日時を記録し、認定申請時に提出してください。

何を説明するのか

苦情窓口

近隣住民の方へは、次に掲げる事項を記載した書面を使用して説明しなければいけません。

  • 特定認定を受けようとする者の氏名(法人にあっては、その名称及び代表者の氏名)
  • 施設の名称及び所在地
  • 事業の概要
  • 苦情等の窓口の責任者の所在地、氏名及び連絡先
  • 廃棄物の処理方法
  • 火災等の緊急事態が生じた場合の対応方法

苦情窓口の設置

近隣住民からの苦情等に適切に対応する窓口を設置しなければいけません。

さらに24 時間施設に速やかに駆けつけることができる体制を構築することも義務付けられています。

その連絡先(責任者の氏名、電話番号等)を宿泊する施設の中と建物の出入口に付けなければいけません。

特区民泊として使用することの物件所有者の許可

賃貸の場合や賃貸した物件を更に貸し出す(転貸)場合でも、貸す人や転貸する人全てが、その物件を特区民泊として使用することを承諾していなければいけません。

また、契約書などで「民泊禁止」とされている物件は特区民泊として認定されません。

管理規約に違反していない事

マンション等の管理規約で「民泊禁止」とされている場合は特区民泊として認定されません。

標準管理規約の解釈は自治体によっても異なるようですので、所轄の行政の担当部署に確認されることをおすすめします。

マンション管理規約に関しましては『えっ!民泊が禁止!?マンションの「管理規約」って何?』で詳しくご説明していますので、ご参照下さい。)

対応言語の掲載

外国人といっても、いろいろな言語がありますので、どの言語に対応できるかをホームページなどで掲載しておかなければいけません。

私達が海外旅行に行く時に、宿泊先のホームページに「English Only」と書かれていれば、「ああ、英語で話さなければいけないのか。まあ英語だったら電子辞書を用意すれば大丈夫かな」と事前に用意することができますよね。

対応言語は英語以外でも構いません。

但し、必ず日本語以外の1言語に対応する必要があります。

滞在に必要な役務の説明

宿泊施設は、外国人が民泊に宿泊するために必要なサービスを提供します。

そのサービスの内容を、口頭、文書の交付、映像(例えばテレビ電話等による方法)等その他滞在者本人に説明するための体制を整える必要があります。

利用案内書の備え付け

居室内に施設の使用方法に関する案内(利用案内書等)を備え付けなければいけません。

さらに、認定事業者は、施設の滞在者に対して、使用開始時に、次に掲げる施設使用の際の注意事項も説明しなければいけません。

  • 施設に備え付けられた設備の使用方法
  • 廃棄物の処理方法
  • 騒音等により周囲に迷惑をかけないこと
  • 火災等の緊急事態が発生した場合の通報先及び初期対応の方法(防火、防災設備の使用方法を含む。)

ごみの処理について

居室内で発生したごみの処理方法を宿泊者に、あらかじめ説明しなければいけません。

民泊施設で出るゴミは、事業系一般廃棄物と産業廃棄物、再生資源化物に区分されますが、きちんと説明をしなければ外国人には理解し難いので、外国語で判りやすく説明をしましょう。

集積場所、排出時期、一般廃棄物との区分等のルール、禁止事項等を施設の利用説明書に明記することは必要ですが、更に滞在者に直接説明することも重要になります。

廃棄物集積所を確保して、廃棄物集積所を周知するための立札、看板等を立てて、滞在者に廃棄物集積所が分かるようにしなければいけません。

事業者が処理する場合、収集時期、分別等のルール、禁止事項等を委託事業者等と十分調整して、廃棄物の集積・保管は、他の居住者の一般廃棄物とは区分します

水道に関して

手洗い場

浴室が水道水や飲用に適する水以外の水を使用する場合は、「飲用不可」の表示をしなければいけません。

また、次にあげる水質基準に適合するための措置を講じていることも必要です。

  • 色度は5度以下であること
  • 濁度は2度以下であること
  • 水素イオン濃度の数値は、5.8 以上 8.6 以下であること
  • 過マンガン酸カリウム消費量は、水1リットル当たり 10 ミリグラム以下であること
  • 大腸菌は、検出されないこと
  • レジオネラ属菌は、100 ミリリットルの検水で形成される集落数が 10 未満であること

連絡体制の整備

滞在者が病気になった場合は、事故、事件、火災等の緊急事態に備えて、滞在者が認定事業者と常に連絡できる体制を整えていなければいけません。

違法行為対策

違法行為対策

テロ、違法薬物の使用や売春等の施設での違法行為や感染症の蔓延を防止するために、次に掲げる措置を講じなければいけません。

  • 滞在者名簿(滞在期間、滞在者の氏名、住所、職業及び滞在期間中の連絡先並びにその国籍及び旅券番号を記載したもの)を作成し、3年以上保管するための体制を整えていること
  • 滞在者名簿の記載方法、保管方法等を、あらかじめ取り決めておくこと
  • 滞在者に旅券の呈示を求め、複写し、保管する方法とすること
  • 滞在者が施設の使用を開始する時及び終了する時にあっては、対面又は滞在者が実際に施設に所在することが映像等により確実に確認できる方法により、滞在者名簿に記載されている者と実際に使用する者が同一人であることを確認し、記録すること
  • 契約期間の中間時点で少なくとも1回は、滞在者本人が適切に施設を使用しているかどうかについて状況を確認し、記録するとともに、挙動に不審な点がみられる場合や違法薬物の使用又は売春などの法令に違反する行為が疑われる場合には、速やかに最寄りの警察署に通報するための体制を整えていること

消防関連

消防法その他の消防に係る関係法令に適合していなければいけません。

この点は旅館業の簡易宿所と同じです。

消防に関する事は、必ず管轄の消防署にご確認下さい。

外国人滞在施設の消防法令への適合

特区民泊の認定申請には「消防法令適合通知書」というものが必要になります。

「消防法令適合通知書」は交付申請書を消防署に出した後、現地調査などがあり、設置している消防設備等が消防法令に適合していると確認されると交付されます。

消防法令適合通知書交付申請書

【消防法令適合通知書交付申請書】

消防法令適合通知書

【消防法令適合通知書】

特区民泊の審査基準

それでは、特区民泊の要件がわかったところで、どのような基準で審査をされるのかの「審査基準」をみてみましょう。

特区民泊の要件を満たしていること

国家戦略特別区域法、国家戦略特別区域法施行令、厚生労働省関係国家戦略特別区域法施行規則、国家戦略特別区域外国人滞在施設経営事業に関する条例、大阪市国家戦略特別区域外国人滞在施設経営事業に関する規則、大阪市国家戦略特別区域外国人滞在施設経営事業に関する要綱といった法令等に適合していることが条件となります。

つまり、先程ご説明した要件を見たさなければ特区民泊として認定はされません。

提出書類

特区民泊の認定申請書には次の書類を添付しなければいけません。

  • 申請者が法人である場合には、定款又は寄付行為及び登記事項証明書
  • 申請者が個人である場合には、住民票の写し
  • 賃貸借契約及びこれに付随する契約に係る約款※
  • 施設の構造設備を明らかにする図面(施設の各階ごとの平面図とし、事業の用に供する居室及びそれ以外の居室の別並びに事業の用に供する各居室の間取り、床面積、便所、浴室、台所、洗面設備等の位置を明らかにしたもの)
  • 滞在者名簿の様式(滞在期間中の連絡先、滞在者確認記録を含む)
  • 消防法(昭和 23 年法律第 186 号)その他の消防に係る関係法令に適合していることを証する書面の写し
  • 使用する水が水道法(昭和 32 年法律第 177 号)第3条第1項に規定する水道及び大阪府特設水道条例(昭和 33 年大阪府条例第 30 号)第2条第1項に規定する特設水道により供給される水以外の水である場合にあっては、当該水に係る同法第4条の規定による水質基準に関する水質検査成績書の写し
  • 特定認定を受けようとする者が施設の賃借人又は転借人である場合にあっては、当該施設に係る法第 13 条第1項の賃貸借契約以外の全ての賃貸借契約に係る契約書の写し並びに当該施設の所有者及び当該契約書に係る全ての賃貸人が当該施設を国家戦略特別区域外国人滞在施設経営事業の用に供することについて承諾していることを証する書面の写し
  • 施設が建物の区分所有等に関する法律(昭和 37 年法律第 69 号。以下「区分所有法」という。)第2条第1項に規定する区分所有権の目的である建物の部分の場合であって、当該施設に係る区分所有法第 30 条第1項の規約が定められているときは、当該施設を国家戦略特別区域外国人滞在施設経営事業の用に供することが当該規約に違反していないことを証する書面
  • 施設の構造設備及び外国人旅客の滞在に必要な役務の提供等の概要
  • 付近見取図
  • 居室内に備え付ける施設の使用方法に関する案内書※
  • 近隣住民への周知に使用した資料及び周知方法と実施結果を記した書面
  • その他市長が必要と認める書類

※については、日本語及び役務の提供において使用する外国語によるものを添付すること

実地検査

書類の申請後に施設の実地検査があります。

この検査で申請内容と実際の施設の内容の相違が会った場合は認定はされません。

税金に関して

「実家の土地建物を相続したけど、住む予定もなく空き家になっているから民泊にでもしようか」と思われる方もいらっしゃるかもしれません。

その場合、税金や税務署への届け等には注意が必要です。

固定資産税の特例

住宅用地と新築住宅の建物に対しては、固定資産税及び都市計画税の軽減の特例が設けられています。(詳しくは当サイトの『固定資産税の特定って、何?』をご参照下さい。)

しかし、外国人滞在施設はこの特例を受けることはできないとされています。

本件の国家戦略特区法第 13 条の認定を受けた「外国人滞在施設」は、基本的に7~10 日程度の短期間の滞在を想定した施設である。

本件家屋が住宅と判定されるためには、「人の居住の用に供する家屋」、すなわち特定の者が継続して居住の用に供する家屋であることが必要である(平成9年4月1日自治固第 13 号)。

民泊施設は、短期間の滞在を想定した施設です。

継続して居住の用に供する家屋とはいえないので、地方税法上の固定資産税等の特例を受けることはできません。

現に賃借していない物件についても外国人の短期滞在が想定される場合には、継続して居住の用に供する家屋とはいえません。(総務省自治局より回答)

固定資産税の特例が受けられるのと受けられないのでは大きな違いがありますので、民泊施設では固定資産税の特例が受けられないという点は必ず覚えておいて下さい。

民泊の宿泊税

大阪府の松井一郎知事は2016年10月7日の府議会本会議で、民泊の客から宿泊税を徴収する考えを示しています。

条例では旅館・ホテルの利用客で1人1泊1万円以上の場合、100~300円を徴収すると規定されています。

民泊の宿泊者も課税されます。

2019年6月から、課税対象を宿泊費10,000円から、7,000円以上に引き下げられました。

2023年9月会議で、2025年日本国際博覧会(大阪・関西万博)の期間中における修学旅行生等の宿泊税の課税免除制度の導入する条例改正が可決されました。

家賃の消費税

住宅の賃貸には消費税はかかりません。

しかし、旅館・ホテル、貸別荘、リゾートマンション、ウイークリーマンション等は非課税とはなりません。

外国人滞在施設(特区民泊)においても、同様に貸付料は非課税にはなりませんので、ご注意下さい。

開業届と事務所開設届

事業を始める場合、個人事業主であっても、税務署等に対する開業届(税務署)や個人事業開始申告書(市府税事務所)を提出しなければいけません。

法人を設立する場合は、開業届けと、事務所開設届(市府税事務所)以外にも給与支払事務所等の開設届出書などの提出が必要になります。

詳しくは税理士にご相談されるのをおすすめします。

問い合わせ窓口

特区民泊は旅館業法の適用を受けないので、問い合わせ窓口は保健所ではなく、各自治体で設けられた窓口になります。

大阪市の窓口

大阪市 保健所 環境衛生監視課(旅行業指導グループ)

〒541-0055
大阪市中央区船場中央1丁目2番1-B119号
(船場センタービル1号館地下1階)

申請に係る問合せ及び窓口予約の電話番号
:06-6647-0692(ダイヤルイン)

まとめ

まとめ

いかがでしたでしょうか。

「かなり面倒だなあ」と思われた方もいらっしゃるかもしれませんが、旅館業の簡易宿所営業の許可と比べると、特区民泊の認定はかなり緩和されていると言えます。(簡易宿所営業の許可申請に関しては『民泊の許可申請方法を全解説します!』をご参照下さい。)

「6泊7日以上」という要件が「2泊3日以上」に緩和され、民泊経営者にとって、3つの種類の民泊の中で一番人気の民泊になる可能性もあります。(3つの種類の民泊は『一目瞭然!「旅館業法」「民泊新法」「民泊条例」』で詳しくご説明していますので、ご参照下さい。)

今後、民泊新法も制定されてくると、それぞれの民泊のメリットとデメリットを考えて、ご自身にあった民泊ビジネスを始めることが大事になると思います。

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