「民泊」の問題点と今後の課題

[記事公開日]2016/01/20
[最終更新日]2016/02/21
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民泊の問題点と課題

ここ数年でインターネットを通して契約し、個人宅に宿泊する「民泊」という言葉をよく聞くようになってきました。

「民泊」は観光する側の費用を抑えることができ、貸す側は収入を得ることができるという双方のメリットがあります。

さらには、観光客が増えると言う点で、地方を活性化することができます。

その反面、この新しい「民泊ビジネス」には、まだ法律の整備などが間に合わず、多くの課題も残っているのです。

 

「民泊」の課題

「民泊」は、現在は法律で規制できていない点が多いので、危険な一面があります。

不法滞在者を泊めてしまえば、違法に営業を行うだけの施設になってしまいます。

現時点で「民泊」で問題とされている点を見ていきましょう。

 

旅館業法違反の可能性

旅館業法違反最も問題となるのが、現行の「旅館業法」の違反になる可能性が挙げられます。

旅館業法で定められた、ホテルや民宿などの一般的な「旅館業」とは、施設を作って宿泊料をもらい、人を泊めさせる営業で、社会性があり継続して行う必要があります。(旅館業法に関しては「旅館業法とは」をご参照下さい。)

仲介サイトを通じて泊める場合は、取引する相手は世界でインターネットを閲覧できる不特定多数の人なので、限られたコミュニティでなく社会性があると言えます。

借主(ゲスト)を泊めて仲介サイトに登録し続ければ、継続して行えるので営業として認められます。

そうなると旅館業登録が必要になります。

例え旅館業法が適用されない民泊特区(国家経済特区で民泊条例を制定している地域)であっても、民泊の申請は必要です。

旅館業法では、「ホテル営業」と「旅館営業」、カプセルホテルなどの「簡易宿所営業」、「下宿営業」の4種類に分かれていて、民泊は「簡易宿所営業」に該当するという流れになっています。

簡易宿所の条件として旅館業法には「フロントの設置」は明記されていませんが、条例などの条件を満たすにはフロントが必要になってきます。

また、旅館業法には窓や防火器具、避難路などのも確保必要とされていますが、こういった設備が無いと、火災などの不測の事態が起こった場合に大惨事になりかねません。

必要な条件を備えていない施設で民泊を営業することは、旅館業法に違反していることは勿論、宿泊者の安全の確保も出来ていないということになるのです。

 

建築基準法違反の可能性

用途変更建築基準法には市街化地域内の建物ごとに「用途」が決められています。

(詳しくは『建築基準法の用途変更とは』をご参照下さい。)

居住用で使用している建物は、一般的には「一戸建て住宅」「長屋」「共同住宅(マンション)」のような用途になっています。

「簡易宿所」として営業する場合、一般住宅から簡易宿所に用途変更をしなければなりません。

ここで問題になるのが、市街化地域内では建築出来る建物の用途を地域毎に設定している点です。

例えば第一種低層住居専用地域では簡易宿所の建築は認められていませんので、この地域の住宅で民泊をしようとしても用途変更が出来ないのです。

用途変更をせずに民泊営業をすることは建築基準法に違反することになります。

※大阪府の民泊条例のように「市街化地域内の工業専用地域を除く全ての地域」で民泊が出来るというものもあります。(『大阪府の民泊条例』の「広域参加」参照)

 

消防法違反の可能性

民泊に必要な消防設備住居を民泊として貸し出す場合、建物のどれくらいの割合又は広さで民泊として提供するかによって、消火設備の設置が義務付けられています。

(消火設備設置の詳しい条件は『民泊に必要な消防設備』で詳しくご説明しています。)

旅館業法違反のところでも見ましたように、消防設備がなく火災が起きた場合は大惨事になりかねません。

民泊条例でも、特区民泊の申請を受けるために「消防法令で義務付けられている設備等が設置されていること」が要件になっている自治体がほとんどです。

消防設備は宿泊客の命に関わる重要な設備ですので、この点は例え一般住宅を貸し出す民泊であっても必要な設備であると言えると思います。

 

近隣住民とのトラブル

近隣住民とのトラブル2015年11月5日には、京都のマンションが摘発されました。

これは旅行会社が勝手にオートロックを解放して、多くの中国人観光客を宿泊させたためです。

マンション内には大家と通常の賃貸契約を交わした居住者がおり、中国人観光客が大騒ぎしたりキャリーケースを引きずる音を出したりと、近隣住民に不快な思いをさせていました。

外国人は日本との文化や生活習慣の違いがあるため、宿泊客にきちんとルールを説明しておかなければ、近隣の住民の方とのトラブルになり、結果として民泊というビジネスを継続することが難しくなってしまう可能性があります。

近隣住民とのトラブルに関しましては『民泊のトラブル』をご参照下さい。

 

無断転貸のトラブル

貸主(ホスト)と借主(ゲスト)が必ずしも良い関係を築けるわけではありません。

ホストが不動産所有者の許可を得ないで、勝手に他人に宿を提供する(転貸)の問題点もあります。

民法でも、人から借りた不動産を無断で他の人に貸す、いわゆる「転貸」を禁止しています。

第612条(賃借権の譲渡及び転貸の制限)

1.賃借人は、賃貸人の承諾を得なければ、その賃借権を譲り渡し、又は賃借物を転貸することができない。

2.賃借人が前項の規定に違反して第三者に賃借物の使用又は収益をさせたときは、賃貸人は、契約の解除をすることができる。

もし借りている不動産を勝手に他人に貸した場合は違法行為となり、貸主とのトラブルとなる可能性があります。

 

違法状態で事故が起きた場合

火事旅館業登録が必要な営業形態であるのに未登録で営業していた場合、責任の所在が大きな問題になる可能性があります。

例えば一般住居として火災保険に入っていても、実際には民泊として簡易宿所と同様の使い方をしていて火災が発生した場合、火災保険がおりない可能性があります。

民泊で火災が起こったらどうなるの?』でも詳しくご説明していますので、ご参照下さい。

2015年7月にはインターネットで仲介している民泊を利用していたと思われる海外観光客の方がお亡くなりになられたという事故もありました。

そういった不測の事態が起こった時に、万が一違法状態で営業していたとなると大変なことになります。

 

「民泊」に関する動き

個人宅が利用され始めたのは、外国人旅行客が増えたのに対して、日本には十分な宿泊施設が無いことが原因の一つです。

国でもその問題はよく話し合われており、2014年4月には「国家戦略特別区域法」が施行されました。

旅館業法で適用除外が認められている特別区域では、外国人が滞在する施設を営業することに関して、自治体の条例が厳しいため取り組みが難航します。

しかし特別区域を活用する「とまれる」というサービスを百戦錬磨が始め、Airbnbが日本法人を設立など、民泊に関する事業が新しい動きを見せました。

2015年6月には観光立国推進閣僚会議で「アクション・プログラム2015」が作成されました。

これは外国人が泊まる施設をさらに増やすという内容で、インターネットを通して一般住宅を活用するサービスは、新しいビジネスなのでそれぞれの省庁で検討することを明記しています。

また2016年2月には東京都大田区で民泊条例での全国初の民泊認定業者が誕生しました。

行政の「民泊」に対する動きは日々進んでいます。

民泊に関するニュース』で進捗をご報告していますので、是非ご参照下さい。

 

「民泊」に関する意識調査

2016年に入って、民泊に対する関心も高まり、各社で「民泊に関する意識調査」が実施されています。

民泊の認知度が高まっていると同時に、違法性に対する懸念や見知らぬ外国人がマンションに出入りする不安や違法行為に利用されることに対する不安を感じている人もかなり多いという結果が出ています。

詳しくは『民泊に対する意識調査(2016年2月)』をご参照下さい。

 

まとめ

まとめいかがでしたでしょうか。

2015年6月には「規制改革実施計画」が閣議決定され、実態を調査した上で結論を出すと踏み込んだ内容となりましたが、現在も民泊は法的にグレーなままです。

民泊のトラブル ~事例と対策~』でも書きましたように、新しいビジネスとして始まった民泊は法整備が整っていないこともあり、さまざまなトラブルが発生しています。

現行の旅館業法に則って、旅館業となった場合は、仲介者はサービスは提供しませんが手数料をもらうので旅館業とみなされ、登録する義務が発生します。

旅館業法は、1948年に制定されたものです。

当時とはライフスタイルが大きく変わっているので、現代では不便に感じたり曖昧な表現で規定されている部分が少なくありません。

日本は観光立国を目指しており、2020年には東京オリンピック・パラリンピックも開催されることからさらに多くの外国人旅行客を受け入れなければなりません。

優先するべきことは、旅行者が安全に宿泊できることですが、それに対する具体策が出ていない問題もあります。

日本で仲介業を行っている会社は、本拠地を海外に置いていることが多いです。よってホストとゲストのやり取りにはあまり関与しておらず、個人宅の持ち主の裁量で泊めさせていることもあります。

また多くの宿泊サービスがある中で、民泊だけを強調して外国人にアピールすることも懸念されています。

宿泊業界では、同じように人と泊める仕事をしているのに、異なる条件下でお客を呼び込むことは不公平だと考えています。

ホテルや旅館では、お客を得るために法律をきちんと守りながら設備を良くしたりサービスの質を向上したりしています。

新たなビジネスを規制すると観光客が減る恐れがあり、反対にグレーな営業を黙認すれば既存の宿泊業を衰退させる可能性があるため、政府がどれだけ柔軟に対応できるかが注目されています。

 

 

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行政書士・宅建士 横関雅彦
民泊申請専門行政書士・民泊運営コンサルタント。旅館業許可申請などの民泊ビジネスの申請サポート及び運営コンサルタントを行う。宅地建物取引士の資格も持ち、不動産売買の面でも民泊ビジネスをサポート。 また、総合旅行業務取扱管理者の資格も持ち、将来的に旅行業と民泊をつなぐサポートも展開したいと考えている。